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3-4:だから物理対策は大事なのに

 ヴァスト家の書庫に大机二つ分使って、積み上げた資料の山脈が新たに出来ていた。

 その峰と峰の間で、資料に埋もれるように紙をめくる音をさせていたセシリアはふうっと息を吐くと、斜め向こう岸に見える彼女と同じ黒髪の頭へ目を向ける。

 

「……やっぱり、ペトラ病の流行と竜害は関係しているように思えます」

「それは病の流行と竜害が被ることがないからかい? それで言い切るのは我が妹らしくない。偶然そうなっている可能性はゼロじゃないよ」


 セシリアより一段高い位置にある頭は、兄アーサーだ。

 長い足を組んで椅子にかけている彼は、片手に資料を片手にペンを持って、資料を確認してはびっしりと数字が書かれた紙になにか書き入れている。

 

「で、でも……お兄様っ……一度もないのですよ」

「セシリア、“そう見える”と“そうである”の間には、大きな隔たりがある」

「それは……」

「いつになく我が妹はずいぶんと焦っているようだ。そろそろ休憩かな」


 資料と資料の間から立ち上がった兄アーサーに、大机にへばりついているセシリアは、手元の資料の内容をもう一度目で追いながら顔を上げる。


「あ、まだもう少しっ……」

「だめだよ、セシリア。君は本格的に読み込みだすとなかなか戻ってこない。それに」


 ――そうよ、バカ娘!


 ばっと頭上から手に持っていた資料を取り上げられて、あっとセシリアは腕を伸ばしてそれを追い、すぐ背後に立っていたネイサンに気がついた。

 いつの間に書庫のセシリアの背後まで来たのだろう。まったく気がつかなかった。


「ね、ねねねねネイサンおじさま……っ」

「今日が何日かお分かり? ねえ、<深園の解錠師>様?」


 ばさっと、ネイサンが大机の上にセシリアから取り上げた資料を放り投げる。

 努めて冷静さを維持した、こめかみの筋を浮かせるネイサンの静かな怒り顔に、ひっとセシリアは小さく声を上げた。


「ほら……怖い先生もやってきた。ネイサン、そんな心配しなくてもちゃんと食べて寝かせてるよ〜」

「話になんないわね。一体、書庫から何日出てこない気だ!」


 ネイサンの後ろの言葉が素の地声と口調になっている。これは相当怒っている証拠だ。

 何日……そういえば何日だろう。

 考えてセシリアは、すうっと血の気が引いていくのを覚えた。


(あああぁあっ、今日何日!? 王城行ってない!)


 魔塔へ出るようになって、フランシス王への定期報告がある。

 蒼白になった顔で頭を抱えて、どうしようと目をつぶったセシリアに、はぁっとネイサンが息を吐き出す。


「王城なら行ってきてやったわよ。師に面倒な使いっ走りさせるなんて、本当、いい弟子持ったわよねぇ」

「そ、それは……ありがとぅぅっ……ございま、ふぅっ……ぅっっ!」


 両頬をネイサンの両手の指先に挟みこまれ、ぐりぐりと押さえつけられて、ううぅっと涙目でセシリアは師に感謝を述べる。

 

「ネイサン。教育的指導でもそれ以上いじめるようなら、解雇しちゃうよ」

「あぁッ? 歯止め役にもならないバカ兄が」


 にこやかに言い放ったアーサー()めつけて、ネイサンが貴族にしては若干柄の悪い凄んだ声を出す。

 その声に背筋を震わせてセシリアは、アーサーにふるふると首を横に振った。

 

「ね、ネイサンおじさまにそういう冗談はだめですっっ」

「冗談でもないけれどね。丁度一息入れるところだ、ついでに魔術師の君の意見も聞こうか」


 ふんっ、と鼻を鳴らしたネイサンの手がセシリアの頬から離れ、背の半ばまで真っ直ぐ伸びる明るい栗色の髪を払う。

 

「だから声かけたのよ。ほら、アンタもさっさと立ちなさい。でもって進捗教えろ……ったく」

「ああ、だから魔術書片手に半時間ばかり書架に寄りかかっていたのか」


(そうなのっ!?)


 ネイサンに右腕を掴まれて、ほとんど持ち上げられる形で立って、セシリアはアーサーの顔を見る。

 そんなに前から書庫にネイサンがいたなんて。アーサーはアーサーでなにやら計算らしきものをずっとやっていた。気づいていたなら手を止めてもいいのに。

 資料と睨めっこをしていていたセシリアには、兄を非難できないけれど。


「アンタ、気づいてたんなら声かけなさいよ」

「我々ヴァストの者にそれは無理な相談だ、ネイサン。私も丁度イイトコロだったしねっ」

「これだから、侯爵家は」


 ネイサンのじとっと細めた眼差しをアーサーはにこやかに受け流す。そんな二人を、おろおろとセシリアは交互に見ながら書庫の円形広間へと運ばれていった。



 *****



 この世界にもホワイトボードのようなものがあればいいのに、と思いながらセシリアは大理石の広い円卓の上に大きな紙を広げる。

 アーサーの正面、ネイサンの隣の席から、小柄な体で腕を目一杯伸ばし、この国の東部から南部の国境線を引く。国境にそって大樹海をもじゃもじゃした線で描きこみ、東部の北方には山脈を表す波線を入れていく。


「アンタ紋章とか図案化した魔術式は正確なのに、地図描くの下手ねえ。なにそのうにょうにょした国境線は」

「だっ、大体の位置関係を見てもらえればと……」


 記憶したままの図形を写すのは得意だが、そうでないものを描くのはセシリアは苦手だ。

 大樹海で国境線なんてあってないようなものだよといった、アーサーのフォローは慰めにもならない。

 セシリアは自分の絵心のなさについては諦めて、ここ三十年ほどの間で起きたペトラ病流行地域を丸で囲み、竜害発生地を三角で示していく。それぞれの脇に小さく発生年と月を書き入れて、セシリアは椅子に座り直した。

 家令のケイネスが給仕してくれたお茶を飲み、しばし休憩する。


「それじゃあ、始めようか」

「は、はい……ええと、では」


 十数分ほどして、アーサーの言葉に返事をして、セシリアは円卓の地図へと身を乗り出した。


「概ね三十年くらいの記録から、丸がペトラ病流行、三角が竜害の印をつけました。二重線で書いた三角は上位種で、中を黒く塗った三角は狂化竜と思しきもの、書き入れた数字は発生時期です」

「……多いわね」


 琥珀色の目を細めたネイサンが視線を向けるのは、魔術師らしく三角の印だ。ほんとんど二重線か黒三角で数年に一度は国境近くで大きな竜害が起きている。


「大樹海に接してるからこその辺境とはいえ、これだけの竜害に耐えられる辺境伯領も相当ね」

 

 上位種の竜は知能も高く、滅多に人里に現れる事はない。竜害の大半は、知能低めで群れを成す翼竜のはぐれ個体であり、それでも脅威は脅威だ。狂化した竜は理性を失っているからより手がつけられない。

 魔術師は竜の討伐には必ず手配される。ネイサンにとっては他人事ではないのだろう。


「独特の地形を活かした砦がいくつもあるらしいね。上級魔術師なら要請を受けたことが」

「討伐要請なら断ってるけど?」

「えっ!?」


 こともなげに言ったネイサンに、セシリアは目を丸くした。

 竜や魔獣の討伐要請はほとんど強制的な命令に等しい。魔術師は人外に対抗しえる力を持つ。ほんの一握りの上級魔術師ならなおさらだ。

 驚いたのはセシリアだけではなかったらしく、アーサーが感心と呆れが混じったような息を吐く。


「……魔術師たる者の、自由と引き換えの義務では?」

「対人戦闘ならともかく対竜戦闘ではゴミでしかないのに、受ける意味ある?」

「ね、ネイサンおじさまの魔術は……とてもそうとは」

「特に竜なんて魔力耐性高い人外、“二つ名”持ちの攻撃特化な魔術師との組み合わせなら、足止めくらいやれなくもないけど。大して保たない」


 竜の魔力は他の魔獣とは桁違いだ。魔力耐性も高い。その表皮は硬く、強化魔術を施した武器をいくつも打ち込まないと傷つけられず、生半可な魔術攻撃は弾かれる。

 討伐隊に編成される騎士は対魔獣戦闘訓練を受けた者。武器も魔術付与されたものを使用する。それでも多くの犠牲者が出て、戦闘が集落や街に及べばそこは瓦礫の山か焦土と化す。吐く炎に焼かれれば人は骨すら残らない。


「討伐隊の連中に迷惑なだけ。魔道具供与と武器への魔術付与で勘弁しろってしてんの」


 討伐現場の話を聞けば、たしかにそちらの方がよいかもしれない。

 ネイサンが話す間に、正面からアーサーに有無を言わさない微笑みで小さなミートパイを食べさせられながら、ネイサンの魔術は特殊だからとセシリアは考える。


「で、病気の方は? 感染症を否定した前提でいるようだけど」

「ええと、それは……おそらく間違いないかと……」

「根拠は?」


 腕と足を組み、教師然とした口調で尋ねたネイサンに、んんっと胸元を小さく叩いてセシリアはお茶を飲む。

 侍女のマリーであれば許されないお行儀の悪さを咎められないのは、おそらくネイサンがセシリアに食事をさせることを優先しているからだ。


「ぐっ、軍医様の調査記録です。かなり丁寧な実地調査も行っていて……」

「持つべきものは凝り性の先輩さ」

「ああ……ご同類ね」


 アーサーの言葉に冷めた口調で応じるネイサンに、素晴らしい調査ですとセシリアは言い添える。ここ十数年は実際に現地で治療と調査にあたり、症例も集め、それ以前についても記録を丁寧に再確認している。


「まず、感染症にしては流行の兆しがほぼ見られません。同時発生で多くの人に症状が現れます」

「同じ生活圏ならあり得ないことじゃないんじゃない?」

「えっと、発症直前に用事で発生地域から出かけた人は、行き先で不調を起こしても回復していて……周囲の人にも影響はなく、そもそも感染症としてきたのも現地の人にそう思われてきたからで」


 なるほど、とネイサンは頬杖をついた。


「そういえば、あの食い意地張ったおとぼけは?」

「リトラは石の中で寝てます。退屈だったみたい」


 ()ねるとしばらく石の中から出てこないのは、気難しい精霊らしくもある。

 少し申し訳ないと思うけれど、クリストファーに調べると言った手前遊んでいる暇はない。これはセシリアが自らやるといった仕事だ。やるからにはちゃんと果たしたい。 


「アンタの集中ぶりがわかる言葉ね……それで?」

「ええと、なにか土地特有の病を引き起こしそうなものがないか調べ、特に害があるものはなく……」

「食事や水や大気中の物質などなど、採取して調べていた先輩殿は思いついたのさ。竜や魔獣の生息地である大樹海に近い。ひょっとして魔力濃度かもと。軍属で討伐や探索の後方支援もするからね」


 しかし、発生地域一帯の魔力濃度に異常はなかったと、アーサーは軽く肩をすくめる。

 

「異常は人の方にあった。東部は多くの領で平民も魔力測定を行っている。この竜害頻度では魔術師になれそうな者の発掘に力を入れるのはわかるね」

「……言われてみれば、アルバスの特待生も東部出身者が多いわね」


 ある程度の規模の集落や街には測定記録が残っている。これと患者の測定値を比較すれば一目瞭然だった。

 これは、セシリアの直感と治療薬の特徴からの推察が当たっていた。


「慢性的な魔力欠乏による障害と……思われます」

「で、原因はなんなの?」

「それが……その、不明で……」

「は? 何十人もに同時に魔力欠乏が起きて、現地で調べもして不明!?」 

「軍医様も……辺境伯家に仕える魔術師に相談したようですが……それで発表や報告がしづらかったみたい、です」


 セシリアも様々な資料を読み、考えてもよくわからなかった。特定の街や村で定期的に起こっているならまだしも、辺境伯領を中心に方々で発生する。法則性も特に見当たらない。


「それに竜害との繋がりも……なにかあると思うのに……」


 しょんぼりうなだれてセシリアが言えば、ネイサンが地図からアーサーへと視線を向けた。


「これだけ異様なことが大樹海のそばで起きてりゃ、そう考えてもだけど……だから魔術師の意見、ね」

「そっ。魔術の教師として雇われている威厳を示してくれないかな」

「腹立つ言い方を……慢性的、そもそも魔力欠乏なんてこの娘みたいな馬鹿やらなきゃ、二、三日大人しくしてれば回復する。場の魔力濃度が問題ないなら、体が不足した分を取り込む魔力はあるわけだし」

「そうなんです! だから考えられることは二つ」


 一、人体の魔力量を保つ調節機能が働かなくなっている。

 二、なにかに魔力を奪われ続けて、魔力欠乏状態が続いている。


 指輪のはまった、人差し指と中指を順番に起こしてセシリアがそう提示すれば、ネイサンは口にしたミートパイがひどくまずいもののように顔を(しか)めた。


「アレを思い出すわね……」

「……あれ?」

「あの胸糞悪い王家のアレよ」

「それはもしかして、王家の呪いのことかい?」


 アーサーの問いかけに、機密事項をはっきり口にするんじゃないとネイサンは指を鳴らした。

 円卓の周囲が、空間ごと隔てる光の壁に仕切られる。

 

「え、でもあれは、手の込んだ条件発動型の精神操作系の魔術の一種で……魔力過多と思い込む」

「そっちじゃなくて、王冠よ」

「あ……」

「王冠って、古代遺物が嵌め込まれているとかいった?」


 アーサーの言葉にセシリアはうなずいた。

 王冠の古代遺物は、体内魔力の蓄積を抑えるものだ。正常な人には無用なものを代々の王は身につけ、魔力欠乏の不調を起こしていた。

 だが本人は精神操作系の魔術で、体内魔力が際限なく増える暗示にかかっている。魔力過多の不調と思い込み、王冠の古代遺物に強く依存して悪化するよう仕組まれていた。


「王冠が吸収した魔力はどこへ?」

「え、どこへって?」

「あれ、違う? ネイサンが似ていると言うのなら、それもどこかへ魔力を移すものかなと考えたけど」

「は? なに言ってんのアンタ」

「そういえば、お兄様はずっとなにか計算されていましたが……なにを?」

「座標だよ。我が国の魔塔を基準点として、竜害の竜がどのあたりから来たかは推定だけどね。例えば……この五年前の竜害、被害が起きたのはここ、まあ概ね竜は真っ直ぐ動くし目撃情報と照合して……おそらくこの辺りかな」


 セシリアの地図に、新たに四角の印がアーサーによって書き加えられる。

 そして新たな数字も。


「直近のペトラ病発生地はこの辺り。中心部を取ってこの地点」


 セシリアが囲んだ丸の中心部に点と数字が加えられる。同じ作業を地図の上でアーサーは繰り返す。それを見つめていたセシリアが「えっ、これって」とつぶやいたのは、彼の作業がほぼ終わりに差し掛かった頃だった。


「病気の発生地と竜がいたらしい地点、近似の比をとりそうなのが七割超えるのは偶然とは考えにくい」

「お兄様……」

「上位種はなにか感じ取ってやってきそうだし、狂化は人でいう魔力過多だろ? なにがどうしてなんのためかは謎のままだけどね」

「……ここまでね」


 アーサーが話し終えると同時にネイサンが椅子から降りて、セシリアの左肩を軽く掴んだ。

 なんだろうとセシリアが首を傾けると、険しい顔で行くわよと告げられる。


「い、行くってどこに?」

「魔塔に決まってんでしょうが……アンタは魔術師じゃない。でも明らかにこれは魔術師の領分」

「え、でも」


 これはセシリアが引き受けた仕事だ。だからネイサンにそう言おうとしたのを待たずに、完全に師の顔と口調で彼はセシリアに声を張り上げた。


「さっさとおとぼけを叩き起こして、支度しろっ!」


 その剣幕に身を縮めてセシリアは従う他なかった。



 *****



 魔塔の防御結界は訪問者を選別するが、魔塔に出入りする関係者は別だ。

 魔塔主付きの研究員として登録されているセシリアに、防御結界の選別は効かない。

 そしてそんなセシリアが同行者として手続きすれば……。


(まさかの最上階までフリーパスだなんてっっ!! 防犯っ!!)


「ふんっ、危機意識皆無ね」

「だ、だってここは魔塔ですしぃぃ……」

「だからなによ? 防犯意識ゼロでしょうが」

「でも……」


 魔術師の中でもエリートと呼ばれる者が集う場所。そもそも防御結界に守られている。さらにこの階には一部の者しか入れない。誰もかれも腕利きの魔術師なのに、乗り込もうとは普通は思わない。


(あれ? 最近似たやり取りがあったような?)


「アンタの部屋って、魔塔主の執務室の向かいとか言ってたわね」

「“銀髪”、いい奴。マスターに色々くれる」

「り、リトラここで喋っちゃだめっ」

「あの王にしてあの元王子ねえ、本当」


 なにがと思いつつ……内心びくびくしながら、リトラを左肩に乗せてセシリアはネイサンを誘導するように半歩前を歩く。声でわかる。ものすごく怒って苛立っている。それになにか仕掛ける気満々だ。

 魔術師ではないセシリアに、魔術師の領分に踏み込ませすぎというのが理由らしい。しかし一応、解錠師は魔法魔術知識に精通した技能者と、いまは位置付けられているはずだ。


「魔塔に随分と馴染んでるじゃないの。週三も無理って嘆いてたくせに……ここね、鍵が大層すぎて目立ちすぎ。でもって、ハッ、やっぱり危機意識緩すぎっ」

「そ、それは先生だからではぁぁっ!」


 ネイサンはセシリアの魔術の先生である。魔術を考察、読み解く基本はネイサンに教わったものだ。

 そしてセシリアから見て、ネイサンという魔術師は、魔術の常識にとらわれない。


(わたしっ、わたしっ、ちゃんと言った……言いましたからあぁ、ジェフさんに――っ!)


 ビリッっと、空気を震わせる音がして、ひいぃぃとセシリアは祈るように両手を組み合わせる。

 ネイサンの手足が薄緑の仄かな光に包まれる。


「扉だけ鍵かけたって無意味でしょうがっ!」


 ネイサンが魔術を施した足を振り上げる。

 一体なんの襲撃かといった、派手な破壊音。

 ネイサンの蹴りで、クリストファーの執務室の扉がぶち抜かれたのを見て、セシリアは震え上がりながら心の中でジェフに叫んだ。


(だから物理対策大事って言ったのにぃぃいっ!!)


 ドンッ! 執務室の奥が見えたと同時に容赦なくネイサンを狙い、彼に弾かれた白い閃光。

 離れていても冷ややかな気配に、びくっとセシリアは肩を寄せて後ずさる。


「変わった魔術だ……それはそうとレディ? 随分と乱暴な客人を連れてきたね」

「ちがっ……うぅ」

「苦情を言いにきたのよ、アタシに話を通さずに王城経由で弟子を便利に使おうとする魔塔主様にね」


 突然の修羅場にセシリアはその場で作業用ローブの布の塊となって、廊下にうずくまりたかった。

ネイサン的には「人の弟子をいいように使って、王家の銀髪親子が」といった心境です。

このまま危ない現場(竜害多発地域)に連行もされそうなのでその前にと乗りこんでいます。


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