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153話目 後付け

 『ちょっと』の言葉通り歩くこと数分、彼女に連れられてたどり着いた場所にはなんだかよく分らない黒光り……、黒だよな? 森の中が薄暗いせいでハッキリせんが、とりあえず黒っぽい色をした何かがそこにあった。大きさは……1立法メートルくらいか?


「コイツのお陰でアタシはここに来れたんだ」


 そう言いつつ周囲を警戒する彼女の顔はよく見えないが、その声には誇らしげな色が混じっていた。恐らく、この黒い何かは彼女の作った物なのだろう。しかし見ただけではこれが何なのかも、何をするための物なのかも分らない。


「これは……、魔道具? でも、何か違うような……」

「へぇ、あんたらは魔道具って呼ぶのかい。そいつは言いえて妙だね」


 俺にはよくわからなかったが、一緒に付いてきたシャルにはおぼろげながら何か掴めたようで、アンの反応からしてそう違わないようである。こういう所でも俺とシャルの才能の差を感じちゃうねぇ、って。


「待て待て待て待て。魔道具、魔道具っつったか今? マジで? 嘘でしょ? え、作ったの? アンが? マジで? いやいやいやいや、ちょっとどういうことか説明してよ」

「な、な、何だよその食いつき具合は。つーか説明してやってもいいけどさっさと戻ろうぜ。いつどっから魔物が襲ってくるか気が気じゃねえんだよ」

「いや、そんなのどうでもいいから。俺の家の近くにゃ滅多に寄ってこないし、もし寄ってきてもぶっ殺す、ってか今現在進行形でぶっ殺してるから早く説明しろ」

「サラっととんでもないこと言うんじゃねえよ……」


 アンが顔を引き攣らせながら何か言っているが、とんでもない事言ったのはお前の方だよ? だって魔道具って、俺の知る限りで俺以外じゃ世界初だよ? そりゃ世界初の俺んち訪問をぶちかましたからには何かあったんだろうけどさ、だからってまた連続で世界初を出してくるとは驚きだよ。そもそも森の外では魔法は火と水だけって信じられてて、それだけでも相当の訓練が必要で、万人が扱えるようになる『魔道具』なんて発想すら存在しないのに、コイツ何やらかしてんだ?


 洗いざらいぶちまけてやりたくなるがそれはそれで話が進まないので、用意していた椅子とテーブルを魔法で呼び出して着座を促す。いきなり現れたそれらにアンは目を丸くして『流石は【森の魔法使い】ってわけかい』とか言ってるが、こんなどうでもいい魔法なんかに驚いてないで早く話しなさいってば。


「コイツはまあ、早いとこ言えば新型の『鎧』なんだわ」

「『鎧』だぁ?」

「ああ。と言っても、見せなきゃ分りにくいだろうね。その、すまないけど魔物から採れる石を分けてくれないかい? 少しでいいんだ」


 便宜上、勝手に『魔石』と呼んでいる素材が化け物どもの体にはほぼ(・・)必ずある。……あるんだよ。


 何故かこの森のヤツらには存在しないが、森の外のヤツらには必ずある。しかし、毛皮や肉といった分かりやすい素材と違い、魔石の活用法が発見されていないため打ち捨てられるか、宝石代わりに貴族が収集しているくらいでしかない。


 この魔石には微量ながら、元の化け物由来の魔力が籠っているため、魔道具作りに使えないこともないのだが……、態々こんな微量の魔力のために使いにくい素材を使うよりも、使用者本人から魔力を徴収した方がマシである。そのため、使い道は無いながらも意味もなく貯め続けた魔石が収納魔法の中で山となっている。


 そこから魔石を一掴み取り出し、アンに渡した。彼女は(くだん)の魔道具の蓋を開けると魔石をその中に放り込んだ。

今まで描写が無かっただけで、そういう素材があったんだよ。使い道が無かったから今まで描いてなかっただけなんだよ。もし書いてて設定矛盾してたらごめんなさい。

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※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
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