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番外8

 「――――!! ――――!!」


 男が一歩、また一歩と近づくが、彼女はそれに気づくことなく必死に呼びかけ、悲痛な叫び声が辺りに響く。当然男の耳にもそれは入るが、その内容に男は一切の興味をなくしていた。彼の胸中には苛立ち、失望、自己嫌悪といった感情が渦巻いており、ただ思うのは「やる事をやってさっさと帰りたい」であった。


 ようやくの思いで男は二人の所にたどり着いた。膝をつき、相方の手を握っている彼女を男の影が覆う形となっているが、それでも男に気付く様子は無い。あまりの不用心さに男は呆れ果てる。もしも今ここにいるのが自分ではなくて魔物だとすれば彼女はどうするつもりなのだろうか。そうでなくても、ガラの悪い冒険者だったならば持ち物を奪われた上にバラされて埋められていただろう。


 彼女らがどれくらいの時間こうしていたのかは知らないが、一体どれだけの幸運が重なったのかと男は考えつつ懐を探った。血の臭いに魔物が寄ってこなかったことも、冒険者に襲われなかったことも、そして寄ってきたのが()()()()()()()()()


 男は目当ての物を探り当てると、血を流して倒れている子供にそれをダボダボと振りかけた。


「えっ?! 何?! いや! あなた誰、ちがっ、何をしてるんですか!」


 ここまでされれば流石の彼女も気づいたか、と思いつつ、男は彼女の問いを無視しながら空になった瓶を懐に押し込んだ。


 彼女は放り出していたナイフを拾い慌てて立ち上ると、威嚇するかのようにそれを男に向けた。実際威嚇なのだろうが、ナイフはボロボロで、手元は定まっておらず、意識は明らかに倒れた仲間へと向いているため、男にとって何の脅威にもなっていない。


「ポーション」

「え?」


 ぼそり、と一言だけ男は言葉を発した。意味が分からなかったのか、彼女は間の抜けた声を上げたが、男は答えることなく背を向けて街へと歩き出した。


「ちょっ! 待ってください!」


 そんな声が後ろから聞こえてくるが、男は気にせずに帰る。あの様子ならば仲間を気にして自分を追ってくることもあるまい、と、自分が出来ることはやったのだから自分は悪く無いのだ、と、金を溝に捨てた方がマシだったかもしれない、と、そんなことを思いながら。

ルビの振り方忘れてた(小声)

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※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
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