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109話目 異世界のG

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 ほぼ作業的にゴブリンを処理しながらたどり着いたのはヤツらの塒としてはポピュラーな洞窟であった。この時間帯に見張りは居ないのか、それとも見張りを立てるという知恵が無いのか入り口付近にはそれらしき気配は存在しない。


 それではいざ洞窟に突撃……、と一歩踏み出すとシャルに後ろから服の裾を掴まれて待ったをかけられる。


「師匠、私にも仕事ちょうだい」

「ああ、少しは私たちにも役割をくれないか」


 思えばシャルは初日に食材を集めて料理をしてからは特にこれといった活躍をしていないし、リーディアに至ってはほとんど何もしていない。そうか、さっきまで無表情だったのは特に何も思っていなかったんじゃなくて怒ってたからだったのね……。


 シャルは若干拗ねたような、リーディアは静かに怒気を孕んだ表情をしている。シャルはまだいいとしてもリーディアはヤバい。何でそこまで怒ってんのと思ったがすぐに答えに思い至った。冒険者として依頼を受け、それをこなす事を楽しみにしていたというのに出来そうな仕事を全部俺に掻っ攫われては怒りを覚えて当然だろう。


「分かった分かった、俺は後ろから見てるから」


 そうなれば押しに弱いことに定評のある俺が逆らえるはずもなく、降参の意味で両手を上げて苦笑しながら二人にそう答えた。二人は顔を見合わせると頷き合うと洞窟に向けて歩き出した。一方、心配性な俺から見てもどう考えても二人がゴブリンに負ける要素は無いので安心して見送りをするのだが、そうでない人物がここには居た。


「おい、姫さんはともかくシャルは大丈夫なのか」


 帝国内ではリーディアの剣の腕はよく知られているのか、ライザがリーディアを心配する様子は無く、むしろリーディアよりも強いシャルの心配をしている。まあシャルは魔法使いとして登録しているし、この旅の途中で俺とシャルが見せた魔法がたき火を点ける時に使ったしょっぱい魔法だけなので無理もない。もしかしたら俺は戦闘要員で、シャルは雑務係としてリーディアと一緒に居ると思われているのかもしれない。


 シャルの方がリーディアより強いと言っても信じられないだろうから、『まあ大丈夫だから見てろって』と俺が投げやりに返事をすると一応は納得したのか、ライザはそれ以上言葉を続けなかった。しかしながらいつでも飛び出せるように構えを解くつもりは無いようだ。


「それじゃ、行くよ!」


 シャルはその掛け声とともにバレーボール程の大きさの火球を作り出すと、洞窟の入り口付近の地面に向けて発射した。はて、ゴブリンどころか何も無い地面に撃ってどうするつもりなのだろうか。


 その答えはすぐに分かった。火球は地面に当たると大きな音を立てて爆発し、周囲の空気を大きく震わせた。そしてしばらくするとその音を聞きつけたゴブリンがうようよと洞窟から飛び出してきたのだ。


「ギャーギギー!」

「ギュアー! ギャギー!」


 非常に耳障りな鳴き声を発しながらゴブリンどもは二人へと突撃する。その様子は視界一杯の大量の小太りの汚いおっさんが女性二人に迫るというくっそ汚い絵面であり犯罪感が半端じゃない。これが薄い本とかならその数に圧されて色々とアレな展開になってしまうところだが、それに立ち向かう二人の実力もまた半端ではない。


「ふっ!」


 剣が一閃し、首が三つは飛んでいく。シャルはごく普通に剣で戦っているが、リーディアは敢えてゴブリンに囲まれるように位置取りを行い四方から飛んでくる攻撃を避けつつ攻撃を行っている。初めは彼女も普通に戦っていたのだが、あまりにもゴブリンが弱すぎると感じたのかそんな風に戦い始めたのだ。しかしその程度では何のハンデにもならないようで終始何かに耐えるような辛そうな顔をしていた。あれは多分つまらないゲームで周回作業をしている時の顔だ。可哀想なので近いうちにキラーエイプでの訓練をさせてあげる事にしよう。


 それにしても洞窟の奥からゴブリンが出てくるわ出てくるわ。夏場のゴキブリの如く湧き出してくるそれを一々探しながら倒すのは非常に面倒であったと思われる。それを避けるためにシャルは火球で音を立てて呼び出すことにしたのだろう。普通に乗り込んで皆殺しにするか魔法で水を作って水没させるかしか考えてなかった俺とは大違いである。


 あの程度の大きさの火球ならば不自然では無いし、今二人が披露しているのも練度こそ高いが一般的な戦い方である。ライザもシャルの意外な強さに感心しているようだが驚いた様子は無い。仮に魔法で水没させていたらそのあまりの非常識っぷりに俺が質問攻めに遭う事は間違いなかっただろう。シャルよ、脳筋な師匠を止めてくれてありがとう。

紹介状貰ったから明日くらいにでも履歴書送るよ!


以下無駄話


私が住んでいた寮の管理人さんと先輩が近くにあるインドカレー屋に二人で行きました。普段は寮のみんなと一緒に食べに行くのですが、『インド人に勝ってやる!』と意気込んで辛さの限界に挑戦するという事で二人だけで行ったそうです。インド人が営んでいるその店では辛さが50段階で選べるのですが、私は20くらい、限界まで頑張っても30くらいなのですが二人はその日辛さ50を頼んだそうです。


「肉は斬撃、カレーはマグマ、サラダはオアシス、ラッシーは賢者の水」とかいうよくわからないがとにかく凄い感想を管理人さんは仰っていましたが、とにかく必死に完食したそうで、食べ終えたときには先輩や店の人と満足げに感想を話したそうです。


「いやー、しかしインド人はこれくらいのを食べているんでしょ?」


そう管理人さんが店の人に尋ねると







「ハハハ、インド人はこんな辛いの食べないよ」


という答えが返ってきたそうです。


そんな話を昨日地元のインドカレー屋に行った時に思い出しました。

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※話の大筋は変えませんが、最初から150話くらいまでの改稿予定(2019/12/7)  改稿、ってか見やすさも考慮して複数話を一つに纏める作業にした方がいい感じかな?  ただし予定は未定です。「過去編」「シャル編」「名無し編」は今は触りません。触ったら大火傷間違いなしなので。
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