48話 vs魔人ですわよ②
「はあっ!」
まずはわたくしから! 大剣を構え、一気に飛翔! 骸の王に剣を振るう。
「ふん。神器ですらないのか。ほれ、『マジックシールド』」
バキンッッ! という音が地下闘技場に響く。剣が盾に遮られ、盾の向こうでは骸の王が笑っているように見える。
「そんなに得意げになることかしら?」
「当然よ。儂を少しでも追い詰めたものの剣を受け止めたのだからなぁ」
「受け止めた……? それはずいぶんな驕りね、【魔人】」
「何ぃ……」
「『ライトニング!』」
剣を雷で強化する。この手法は見ていたでしょうけど……。
「ここまで全力で使うのは、初めて見るのではなくて?」
「ぬぅ! 『ダークネスダイブ!』」
盾を壊したところでまた闇の中へと潜り込んだ。
「はぁ……はぁ……おのれ……」
ずいぶん疲弊しているわね。このまま押し切るわよ、と柚子にアイコンタクトで送る。
「『紫電:一文字斬り!』」
「舐めるな! 『フレイム!』」
「うあっ!?」
「柚子!」
【魔人】の放った火炎が柚子に直撃する。柚子が炎に包まれてもがく。
「『ウィンド!』」
超強風を吹かせ、柚子の炎を取り払った。柚子は……無事のようね。
「ありがとうございます……アリス様」
「いいのよ。無茶しないでね」
わたくしの心臓が持ちませんわ。もし何か柚子にあったら……もう生きていくことなんてできないわね。
「優しさ100%のアリス様をもっと堪能したいのに……【魔人】め……」
柚子はわたくしが普段優しくないと思っているのかしら。だとしたら普段の接し方を変えるべき? いやいや、今はそんなことを考えている場合ではないわね。
「遊びは終わりじゃ」
そういうと【魔人】は超級アイテムの杖を手に持った。来るわね……何かしらの大技が。
「柚子、ここを凌ぐわよ!」
「は、はい!」
「ふっはっはっ、よく戦ったわ。じゃがこの魔術の王たる儂に勝つなどあり得ぬのだ! 喰らえ! 『デスリングジョイント!』」
【魔人】が杖を傾け、わたくしたちの方へ向けて魔法を発動させた。闇色のリングが連なって襲いかかってくる。
「『ライトニング!』」
わたくしの全力の全力で雷を放出! 闇色のリングとぶつかり合い、辺りには衝撃波が生まれた。
「ぬぅ……小娘がぁ!」
「くっ……骨のくせにぃ!」
なんて威力なのよ……これがレベル69の魔法!? レベル100のわたくしですら互角ということは魔法レベルがとんでもなく高いのね……。
「ゆ、柚子!」
「はい! 『紫電:十文字斬り!』」
柚子の斬撃が【魔人】の魔法を穿つ。わたくしの魔法と柚子の斬撃で……どうよ!
「ぬぅお!!!」
押し切るまではいかなくとも互角で消滅させるところまではできたわね。上出来じゃないかしら……。
「おのれ……調子に乗るなよ小娘がぁ!」
完全に冷静さを失った【魔人】。ダメね。冷静さを失った生き物に、成功することはないわ。つまり……わたくしの勝ちよ!
ただ、『絢爛の炎』が使えない以上決定打に欠けるわね……どうすれば……。
ふと眠っているみんなが視界に入る。……そうだわ! あれなら高火力を叩き出せるのじゃないかしら?
「……柚子、少し時間を稼いでくれるかしら。わたくしが決めるわ」
「はい! お任せください!」
わたくしに任されたことが嬉しいのか、柚子の顔が少しだけ明るくなる。やっぱり可愛い……じゃないじゃない! 今はそんなことを考えている場合じゃないわよ、アリス。
「いくぞ【魔人】。叩っ斬る!」
「ほざけ! 貴様1人で何ができる!」
柚子と【魔人】との戦いが始まった……。ここはわたくしがしっかりと決め切らないといけないわね。
イメージするのは……ニコラの魔法、『アイスモンスター』。威力、範囲共にレベル20代にしては破格のものだった。ならわたくしがその魔法を使えるのなら【魔人】を倒す一撃が生まれるはず。
ただあれの欠点として、動きが鈍く、遅いこと。その原因は図体の大きさ。なら……人間より少し大きいくらいにして機動力を上げれば……。
イメージをどんどん膨らませていく。もうすぐ……もうすぐで完成するわ!
「ふははっ! その程度か? 小娘。その神器が勿体無いのぉ」
「黙れ! これは私の誇りだ! ライカさんに貰い、アリス様に託された刀だ!」
柚子が頑張ってくれている。すぐにわたくしも作り上げないと。さらに機動力を上げるためには……材質ね。雪ではなく、風、雷。これなら高火力を保ちつつ、高機動も得られる。これだわ!
「……やっぱりわたくし、天才でしたわね。行くわよ! 『風雷坊』」
『ウィンド』と『ライトニング』を掛け合わせ、1つの魔法を仕上げる。作るときのイメージは、3メートルくらいの人形。
「……なんじゃそれは」
【魔人】も未知の魔法に、言葉が出ていない様子。
「天才のわたくしが作り上げた、天才的魔法よ。感謝なさい! あなたのようなクズが受けるには勿体無いくらいの魔法よ!」
「ほざけぇ! 『デスリングジョイント!』」
再び闇色のリングが連なった魔法を放ってくる。今度はいけるわ。なんといっても魔法わたくしの2つ分ですもの。
「行きなさい『風雷坊!』あなたの力を見せつけてやりなさい!」
風の音と雷の音を同時に鳴らして答えた『風雷坊』が『デスリングジョイント』に向かっていく。ただの体当たりでも風と雷が融合した魔法は闇色のリングを破壊して進んでいった。
「な、なにぃ!?」
「ふん。わたくしの魔法に……呑まれなさい!」
「くっ! 『ダークネスダイブ!』」
また闇に潜るつもりね。それなら……
「柚子! 出てきた瞬間を叩きなさい!」
「はい! 『紫電……』」
刀を引き、大技の準備をする柚子。それを見て黙っている【魔人】ではない。
「小娘ぇ……! 図に乗るなよ! 『マジックシールド!』」
満身創痍の身体に見えてもまだ盾を出してくる。流石は【魔人】といったところかしら?
闇の渦に隠れていた時間も終え、その姿を見せる。
「『瞬突!!!』」
柚子の大技。紫色の雷と紫色のオーラを纏い、全力で【魔人】を突き刺しに行く。
「ふん。どうせ盾に……ぬっ!?」
「悪いわね。その盾、もらうわよ。『ストレージボックス!』」
「な、なにぃ!?」
柚子の到着前にわたくしが【魔人】の出した盾を回収する。丸裸となった【魔人】目掛け、柚子が突っ込む。
「ぬぉお! 『ダークネスダイブ!』……くそぉ!」
もう潜るだけの魔力はないようね。
「柚子! 決めなさい!」
「はい! はぁぁぁぁぁあ!!!」
「こんな……小娘共にぃ!!!」
その叫びとともに、【魔人】の骨は砕け散った。それと共にわたくしたちの勝利が確定する。
「あぁぁ、緊張しましたぁ……」
「本当、こんなのとあと5回……いや、魔王を合わせると6回も戦わないといけないだなんて、先が思いやられるわ」
「さて……みんなを起こしますか!」
そうね……レベル40未満の者が強制的に眠らされているのでしたっけ。
「……アリス様?」
「いつまで狸寝入りをしているつもりかしら? ノメド」
「……」
わたくしの言葉に、ノメドは反応しない。
「そう。なら……『フレイム!』」
[パーフェクトリング]から放った魔法。たとえ直撃したとしても大怪我にはならないでしょう。
「チッ!」
舌打ちをして、ノメドは立ち上がって避けた。
「え……えぇ!? あの人起きてたんですかぁ!?」
「そうよ。手伝いもせずに、のうのうとわたくしたちの戦いを見ていたのよ。そろそろ教えてくれないかしら? あなたの目的を」
まぁ……おおよその見当はついているけれどね。魔王軍にわたくしたちの名が知れたように……人間たちにだってわたくしたちの存在は認知されたはずだもの。
「そう……だな」
あ、あら? 女の声? それは予想外ね……てっきり男性かと……。
甲冑の頭部分を取り、緑色の髪が空気に晒される。
「初めまして。私はノメド……改め、メルト。【白百合騎士団】の第5席です」
そう、自己紹介した。やっぱり……人間側の方からも面倒が始まりそうね。




