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天才令嬢アリス様が征く異世界パーフェクト攻略記  作者: 三色ライト
1章 魔蛇編

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17話 島名決定ですわよ

「うぅ……こんなのってないですよ……」


 肩を落としてわかりやすく落ち込む柚子。


「わかりきっていたじゃない。ドラゴンなんて美味しくはないって」


「そうなんですけど……そうなんですけど! お店にあるならワンチャンあると思うじゃないですか!」


 まぁ……一理ありますわね。お店で提供している以上はそれ相応のニーズがあると思いますもの。よくよく周りの席を見ていたらどうやら根性試しに食べる人が多いみたいね……。


「でもまだ諦めてません! 魔獣の唐揚げならワンチャン……!」


 もうそれツーチャン目ですけど……という言葉は喉の奥にしまう。最近喉の奥にしまいすぎていつか溢れてきそうで不安だわ。


「お待たせいたしました。魔獣の唐揚げです。本日は[デスラゴン]の肉を使用しております」


 そう言って提供されたのは……これまた露骨に食べてはいけないオーラを放つ唐揚げ。なんというかオーラが紫色なのよね……。


「いっただきまーーす!」


 わくわくした顔で口に運ぶ柚子。普通ドラゴンの不味さで懲りないかしら。


「んん! こ、これは……!」


「どう?」


「……可もなく不可もなくって感じです。時間のたった唐揚げって感じです」


 結構不味そうな感想のわりにパクパク食べているのは比較対象がドラゴンだからかしらね。


 食べているものはアレだけれど……この状況は普通にお食事デートよね。無人島と異世界に来てもう3年と少し。そろそろ進展があってもいいころじゃないかしら。


「ね、ねぇ柚子? そろそろわたくしたちも長い関係じゃない?」


「はい。そうですね」


「そ、そろそろ次のステップへ行くべきだと思うのよ。柚子もそうは思わない?」


「そうですね! 私もそう思っていました!」


 来ました! 来ましたわ!! わたくしの時代ですわよ!!!


「そ、そう。柚子にその気があるなら……」


「私たち、もう姉妹みたいなものですもんね!」


「……はい?」


「アリス様が虫食べられない時も私がサポートしましたし、潜入もしますし、私が姉で、アリス様が妹で!」


 ……期待していたのと違う。それに普通に無礼なのだけれど。


「えっと……そうじゃなくて……」


「あっ! そろそろ食材の買い出しに行きましょうよ! クエスト受ける時間無くなっちゃいますよ?」


「えっ そ、そうね」


 そう……柚子にはその気が無いのね……。ほんの少し顔が赤い気もするけど……きっとドラゴンの肉の不味さで体温が上がっただけね。はぁ。こっちはまだノーチャンスということかしら。


 お食事を終えて再び買い物へ。あらかたお野菜は手に入りましたけど、毎回ここに来るのも面倒だから買いだめしておきたいわね。『ストレージボックス』内なら腐らないとかないのかしら。


 小一時間ほど食材を買っては『ストレージボックス』に入れを繰り返していると流石に柚子も飽きたようで……


「うぅーん! アリス様! そろそろクエストを受けに行きませんか?」


 時刻も14時前後。まぁ受注して帰るにはちょうどいい時間帯ね。


「そうね。それじゃあ冒険者組合まで行きましょうか」


 本当は『飛行』を使いたいのだけれど騒ぎになるのは避けたい。歩いていくしかないわね……。


 ようやく組合に着くと昼間だというのにもう酔っ払った中年の冒険者たちが集まっていた。なんとなく数が多いわね……。


「あ、アリス様、柚子様。本日もクエストですか?」


 むさ苦しい酒場の唯一のオアシスこと受付嬢さんに声をかけられる。


「えぇ。何かオススメはあるかしら」


「今朝ちょうど入ってきたクエストがこちらです! [黄金の蛇]の捕獲です! なんと報奨金一千万円ですよ!」


 一千万円ですって!?


「難易度はどれほどなの?」


「[黄金の蛇]は【魔蛇】が現れた際に出現すると言われている伝説的生き物です。今まで発見された報告は二回のみ。超激レアですので難しいかと」


「それならもう少し報酬に色がついても良さそうなものだけれど」


「[黄金の蛇]自体に戦闘能力はあまりないと考えられてますから。もし強かったらもっと報酬は上がっていたと思いますよ」


 ふむ……まぁそれ以外に駆け出しの街【アイン】に稼げるクエストもありませんし、消去法でこれになりますわね。


「わかりましたわ。ではこのクエストを受けさせていただけるかしら」


「はい! ではクエストボードから[黄金蛇の捕獲]の紙をお取りください。捕獲には収納用マジックアイテムなどをご利用くださいね」


「えぇ。わかったわ」


 アイテムじゃなくて自前のものですけどね。


「柚子、これでいいわね?」


「はい! アリス様とならどこへだって行きますよ!」


「そ、そう……?」


 柚子にとっては何気ない一言かもしれないけれどわたくしにとっては致命傷になりかねない言葉ね……。


 えっと場所は……【アイン】北部にある街【イリス】との境にある森ね。また北に行きますの……? 先程まで買い物をしていた場所じゃない。何か負けた気分になりますわ。


「アリス様どうします? 今日出発しますか?」


「うーーん、今日は一旦島へ帰りましょうか。明日の朝からクエストにとりかかりましょう?」


「はい!」


 そうと決まれば飛んで帰るとしましょう。目立たないように路地裏に入って……


「柚子、バンザイ」


「はーい」


 柚子を抱き抱えて飛翔! よくよく確認すると『飛行』スキルのレベルが69まで上がっていましたわ。こんなにスラスラ上がっていくものなのね。


 余裕が出てきたから気がついたけれど、異世界の海ってかなり綺麗なのね。空から見ても水が透けて魚が見えますわ。無人島の周りの海はそこまで綺麗じゃないというのに……。


 そんなことを考えつつ無人島へ到着。そこでふと思ったのだけれど……


「ねぇ柚子、わたくしたちでこの島に名前をつけません? いつまでも『無人島』呼びでは味気がないですわ」


「いいですね! でもどんな名前にしましょう」


 そうね・・・「柚子」と「アリス」の島だから2人の名前を入れたいわね。柚子の言い換えで確かシトロンなんてあったわね……そうだわ!


「【アトロン島】なんてどうかしら」


「【アトロン島】……いいですね! なんか甘酸っぱそうで!」


「ふふっ。我ながらいいネーミングセンスだわ」


 さて島の名前も決まったことですし、買ってきたものの確認でもしましょうか。


「『ストレージボックス!』」


 叫ぶと同時に闇の靄が現れる。食材をこんな闇から取り出すのは正直嫌ですけど……贅沢言ってられないわね。


 実験として取り出したのは生肉。朝買って今夜ですけど見たところ腐っている様子はないわね。もしかしたら『ストレージボックス』内なら腐ることなく食材を保管できるのかもしれないわね。大剣と一緒に保管して大丈夫なのか心配ではありますけど。


「便利ですねぇその魔法……。私もできるかな……『ストレージボックス!』」


 おもむろに柚子が叫ぶ。でも特に何も起きず……。


「あれぇ〜?」


「人によって向き不向きがあるのじゃないかしら。あとはイメージ力ね」


 今の柚子の行動を見て思ったのだけど、わたくしたち結構ぶっつけ本番で魔法を使っていましたわね。改めて考えてみると恐ろしいですわ。


「アリス様ー! 夜ご飯できましたよー!」


「ありがとう柚子。いただくわ」


 ……ってこれ!


「お、お味噌汁!? いったいどこでお味噌を!?」


「ちゃんと売ってましたよ? 温まりますよねぇ…」


 具のお豆腐まで……。サッと胃に流すとほんわり身体が温まるのを感じた。やはり日本の大和魂に会う料理だわ。


「ごちそうさまでした。さ、明日は[黄金の蛇]、捕まえますわよ!」


「はい!」


 お味噌汁で温まった身体の余韻を残したまま水浴びをして就寝。なんだかんだ、この生活も悪くはないわね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「プリャドラゴン」や「デスラゴン」の肉とか、僕なら絶対に食べたくないです。アリス様と柚子さん、無人島に「アトロン島」と名前までつけるほど、無人島生活に慣れて楽しんでいますね。
2020/08/27 18:29 退会済み
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