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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
エピローグ

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82・ますます賑やかになっていきます

「バートの兄貴ぃ! そろそろカミラお嬢のお迎えの時間だです!」


「ああ。今行きます」


「でも兄貴は忙しいんだろます? 俺たちが代わりに行ってもいいんだぜます!」


「いえ、僕が行きます。あいつは他の人だと遠慮して、すぐ無理をするので。最近まともに話せるようになってきたし、僕も多少は頼ってもらわないと……」


 バートは淡々とした言葉を止める。


 そして自分に注がれる、数々の視線にようやく気付いた。


「……なんですか。みなさんそろって変な顔をして。言いたいことがあるなら口で言えばいいじゃないですか……っ、だからなんですか! さらにグレードアップさせたその妙な顔は!!」


 その場にいるにやにや顔の全員を代表して、セルディがいい笑顔で返す。


「バート、行っておいで。カミラが君を待っているのだろう」


「セルディさま、僕に変な顔をしている場合ではありませんよ。最近は城に仕える者たちが、奥さまと会えるようになりましたからね。お気づきだと思いますが、みなさんすでに奥さまに懐きまくって、すりこみかと思うほどの愛着行動を起こしていますから」


「……知っている」


「ですよね。いくら夫といえども、奥さまを独り占めするわけにはいかないでしょうね」


 バートは一礼すると、従者たちと部屋を後にした。


(私を独り占め? もちろんしなくても大丈夫です! 私のことなら、みなさんも協力してくださいます。セルディさまだけが無理をする必要はありません)


「セルディさま。このゼリーはとてもおいしいので、きっとみなさんも喜んでくださいます。さっそく食堂に行きましょう!」


 エレファナは、後ろに置いてあった木箱を持ち上げようとする。


「あらっ」


 思った以上のずっしり感にふらつくと、セルディがさっと手を伸ばした。


「エレファナ、君は強い女性だから、自分にできることは当然のようにこなしてしまうけれど……。こういうときは俺に頼ってくれると嬉しいのだが」


(セルディさま、この重い木箱を軽々と持ち上げてしまいました。訓練のたまものです)


「ありがとうございます。でも私、セルディさまのおかげで元気になりました! たまにはふらついて、こうして支えてもらうこともありますけれど。それにご安心ください、他のみなさんも助けてくださいますので!」


「……そうだな。みな君を慕っている。君が城内を歩いているだけで、人が引き寄せられるようにやって来る」


(セルディさま、私のことを見守ってくださっているのですね!)


「そのうち話す順番の取り合いになるほどだった。様子をうかがっていても、俺の入り込む隙間が無かった」


 珍しく拗ねた口ぶりのセルディに気づいて、エレファナはまじまじと見つめる。


(なぜでしょう。セルディさまがつまらなさそうな顔をしています。私、みなさんと仲良くできていると思っていたのですが……)


「私はセルディさまと一緒にいて、してもらって嬉しいことをたくさん覚えました。だからみなさんにもそうするようにしています。そのおかげで仲良くなれたと思っていました。でも……もしかすると、失敗していましたか?」


「いや、逆というか……。俺が君にしても、他の人にはしてはいけないこともあるだろう」


「え! まさかそんなことが……」


「ある」


 断言されて、エレファナは目を丸くした。


「あるのですか!?」






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