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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
10章

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79・間違いありません!

「私がセルディさまに、愛を教えたのですか? でも私の心は……」


 戸惑っているエレファナに気づくと、セルディはいつもそうするように手を伸ばして、しっかりと抱きしめる。


「君が他人と自分の心が違うと感じているのは知っている。それは構わないさ」


「構わないのですか?」


「心は強要するものではないから、それぞれでいいのだと思う。ただ俺は君を愛している。俺たちの枷は無くなったが、君さえよければ俺のそばに……これからも妻でいてくれると嬉しい」


 セルディは互いの体をそっと離した。


 そして先ほどまでの迷いは消えたように、まっすぐエレファナを見つめる。


「だがそれは俺の願いであって、君がそれに合わせるような息苦しいことはしないでくれ。俺に遠慮せず、エレファナの正直な気持ちを聞かせてほしい」


「私の気持ち……」


(私はセルディさまと一緒に過ごして、色々なことを教えてもらいました。私は私のことを知りました。それに、セルディさまのことも)


 ふと、影の世界でひとり捕らわれていたときの、あの漆黒の景色が浮かんだ。


「私、ドルフ皇帝の影に捕らわれたとき。少しだけセルディさまの気持ちがわかった気がしました」


「俺の?」


「以前の私なら、そういうものなのだと思って、ドルフ皇帝に魂を捧げていた気がします。逆らうこともできたのに、それを考えたことすらなかったのです。誰も困りませんから。でも今は……。私がいなくなったら、セルディさまは……」


 エレファナの胸の奥から、強い感情が込み上げてくる。


 しかし以前のように涙を流す代わりに、偽りのない笑顔を浮かべた。


「セルディさま、私もセルディさまに教えていただいたのです。苺が好きとはどこか違う気持ち……」


(礼拝堂で知った、名前のつけられないあの気持ちの答えがわかりました。間違いありません!)


「私はセルディさまを愛しているのです!!」


 エレファナ溢れる喜びのまま、抱きしめてくれているその人をしっかりと抱きしめ返す。


 セルディは驚いた様子で、しばらく固まっていた。


「……そうなのか?」


「はい!」


「それはつまり、もしかすると……妻でいてくれるのだろうか?」


「はい、妻ですから! もちろん妻でいます!」


 セルディはまだ信じられないのか、おそるおそる体を離す。


 しかし目が合うと疑念は払われたように、いつもと変わらず微笑み合っていた。


「エレファナ、手を貸して」


「はい!」


 礼拝堂のときより慣れた様子で、二人は改めて指輪をつけ合う。


 もう互いの指に枷はなく、ただ輝く銀の指輪が再び収められた。


 セルディに手を取られた自分の指輪を見つめて、エレファナはにっこりする。


「私とセルディさまみたいです」


「指輪が?」


「ぴったりですから!」


 銀の指輪はまばゆい朝日を受けて、自ら光を放つ宝石のように輝いた。







 ***



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