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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
10章

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77・精霊さんも嬉しそうです

 猫の姿をした精霊は、ドルフ皇帝の禍々しい気配がなくなったことに安心したらしい。


 くつろいだ様子で空中に寝そべった。


「どうやら辺りの空気も清浄になっているね。これなら僕もエレファナの魂に隠れてまた、ごろごろ眠っても……」


「精霊さん。私を助けてくださって、ありがとうございます! こうして会えて、ようやく色々なお礼が言えます!」


「うん! これで安心して、そろそろ僕も眠……って、え? お礼はさっき聞いたけど」


「それだけではありませんから。あのまま私がドルフ皇帝とり込まれて力を奪われていれば、次は王城が襲われていたんです。精霊さんの協力のおかげで、たくさんの方が助かりました!」


「えへへ。良かったなぁ。じゃあ僕はまたのんびり眠……」


「それに私はずっと、精霊さんに会ってお礼が言いたかったのです。あなたがいてくださったおかげで、近ごろは魔獣の出没もほとんどなくなりました。私だけでなく、騎士の方も使用人の方も、みなさんとても喜んでいました!」


「……そうなの?」


「はい! なによりあなたの元気な姿を見ることができて、私はすごく嬉しいです! 出てきてくださって、本当にありがとうございます!」


「う、うん。でもそんなに喜んでもらえるなんて……」


「エレファナに全て言われてしまったが、俺からも伝えたい」


 セルディはドルフ領主と名乗ってから、エレファナとほぼ同じ内容の感謝を深々と述べる。


 精霊はここまで歓迎されるとは思っていなかったらしい。


「僕は寝ていただけなのに」


 ぽかんとした様子で一通り聞いていた。


「えっとね、僕……」


 精霊は再びのんびり眠ろうと考えていたはずが、小さな口元をもごもごさせて言い直す。


「エレファナとセルディがそこまで喜んでくれるのなら……。せっかく目が覚めたんだ。僕の加護がどのくらい効果があるのか、確認がてら散歩でもしてこようかな」


「はい、見てきてください! 身体が休まったら、次は体力をつけるのがいいそうです!」


 返事のように、精霊の尾が揺れた。


「そうだね。寝るのも好きだけど、散歩も好きだよ」


「元気になるためには、ごはんも大切です!」


「ごはんはもちろん好きだよ! 僕が寝ている間、エレファナはなんでもおいしそうに食べていたもんね。だからエレファナにくっついている僕も幸せだったんだ」


 精霊の大きな目が食欲にきらりと光ったのを見て、セルディも頷く。


「それなら君の散歩のあと、ドルフ領に戻って望むものを用意しよう。なにが良いのか考えておいて欲しい」


「え、いいの?」


「遠慮はいらない。精霊が健やかであればドルフ領、そして国の加護に繋がるんだ」


「じゃあ散歩しながら考えておくよ! でも望むものが食べられるなんて……なににしようかな。迷っちゃうよ」


「迷うこともない。欲しいものはすべて叶えよう」


「本当!? 寝苦しくて無理矢理起こされたような状態だったけど。目覚めてみれば良いことばっかりだなぁ!」


 精霊は機嫌良さそうに長いしっぽを振る。


 そして当然のように空中に一歩踏み出してから、思い出したように二人を振り返った。


「そういえば君たち、ドルフ皇帝からようやく解放されたんだね。おめでとう!」


 精霊は軽やかな足取りで空を駆けあがっていく。


 セルディは枷のことだと思い当たったらしく、エレファナの手を取った。


「指輪の下を確認してもいいか?」


 そう問われて、エレファナは自分のてのひらを前に出した。







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