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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
7章

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56・旦那さまの手際と把握力が見事です

 エレファナは人に聞かれないように、セルディの耳元に顔を近づけた。


「あの、セルディさま。見た者が近づきにくい気配を漂わせている気がするのですが……?」


「ん、ああ。君を変な目で見ている令息がうようよしているから。それでいいんだ」


「そうでしたか。ありがとうございます」


(セルディさまの協力は心強いですが、みなさんのそばにいても怖がられないように、精一杯努めます!)


 二人は親しげに身を寄せながら、自分たちだけに聞こえる小声でやりとりしているうちに、開け放たれた大きな扉の奥から、賑やかな気配が流れ込んでくる。







 *



(あれは……食べられるのでしょうか?)


 辿り着いた天井の高いホールでは、立食形式のテーブルに大きなプレートが並べられ、この国の流行や若年層の好みを意識した、色とりどりのメニューが並んでいる。


 辺りはすでに、着飾った若者たちが歓談や食事を楽しんでいた。


 そこにセルディとエレファナがやってくると、周囲は目を引かれたが、かすかに緊張感を漂わせる。


 人々はこちらの様子をうかがいつつも、気にしていない風を装っているようだった。


(大丈夫です。私はみなさんが怖がるような、怪しい振る舞いはしません!)


 エレファナはそう心を新たにしたが、おいしそうな食事と匂いの溢れる場所にいると、気になる品があちこちに並んでいるので、目をきらりと輝かせてしまう。


 セルディもエレファナの様子に気づいて、すぐに一切れのシーフードピザがのった皿を用意してくれた。


「あまり気負わず、せっかく来たのだから楽しむといい」


 渡された皿を手に取ると、小麦とチーズの焼けた香ばしい匂いが立ち昇ってくる。


 エレファナは普段セルディと食べるときと同じく上品に口に運び、微笑をほんの少しだけ深めた。


(あっ、よく焼けたピザ生地はふっくらしています! 真っ赤なトマトソースは、トマトの甘みと酸味が濃厚な旨味となっていて、本当においしいです。エビはぷりぷりで、そのままでもたくさん食べたいくらいですし、イカも歯ごたえがあるのに柔らかく噛みやすいのです! とろりとしたチーズと弾力のある食感のチーズがどちらもたっぷりのっていて、これは本当に贅沢です!!)


 心底おいしそうに食べるエレファナの様子を見計らい、セルディは彼女が食べ終わったタイミングで、新たな皿を渡してくれた。


(すごいです、セルディさま。私が気になってちらちらと見ている他の品にきちんと把握してくれています!)


 その後もサーモンのマリネに、カボチャのパイ、ローストビーフのサラダ、ティラミスと、セルディはエレファナの視線に止まった順に持ってきてくれる。


 エレファナは品よく、そして幸せそうに食べ続けた。


 その様子に注目していた辺りの人々も、つられるように同じものを手に取り始める。


 すると、初めの緊張感も少しずつ和らいでいくようだった。





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