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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
3章

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25/83

25・旦那さまは気に入ってくれるでしょうか?

 エレファナは軽やかな足取りでエントランスまで行くと、やって来たバートを機嫌よく出迎える。


「バート、どうですか? 今の私、いつもより様子がおかしいと思うのですが、気づいていただけますか!?」


「おかしい? ……あぁ、装飾品を身に付けられているということですか。シンプルなデザインに鮮やかな紅玉が印象的で、エレファナさまに良く似合っていますよ」


(印象的ということは、目立つのでしょうか? それならセルディさまもすぐ気付いてくれるかもしれません)


 エレファナがセルディとの再会を想像して胸を躍らせている中、バートはエレファナの後ろに控える楽しげな二人に目を留めて一瞬固まったが、すぐ何事もなかったかのようにエレファナの昼食の時間だと告げた。


「エレファナさまのお食事には僕が付きますので、母さんはカミラと一緒に選んだ品の確認作業を終わらせておいてください」


「いいえ。私がエレファナの昼食のお世話をさせていただきます。確認作業はその後にもできますので」


「そんなこと言っていたらどうせ時間が取れなくて、昼食を抜くはめになりますよ。折角ですので、今日は僕がエレファナさまの紅茶を淹れさせていただきますから。衣裳部屋からもエレファナさまの様子がよく見えるように、扉を開放してホールと続き間にしておきますし」


「いいえ。あなたにエレファナさまのお世話は任せられませんよ。ねぇエレファナさま」


「食事は大事だと、セルディさまから教えてもらいました。私のために、ポリーはお昼ごはんをとれないのですか?」


 エレファナが真剣に聞いてくるので、ポリーは言葉に詰まる。


 バートがすかさず小声で耳打ちした。


「あなたを心配するあまり、エレファナさまが食欲を落とされてもいいのですか?」


「……わ、わかりました」


 ポリーが渋々頷く横を通り抜け、カミラは「こちらはもうエレファナさまのものですから、そのままで結構ですよ」と、耳飾りもつけてくれる。


(つやつや赤くて、一緒に食べた苺を思い出します。セルディさまは気に入ってくれるでしょうか? もしかするとこれに気づいて、喜んでくれたり、笑ってくれたりするかもしれません。お帰りになってくださるのが待ち遠しいです……!)


 セルディのことを考えながら通された部屋は、正面の大窓から野原が見えて開放的だった。


 エレファナが自然な木目のテーブルに着くと、バートは小さめのサンドイッチと、香り高い茶葉と合わせたミルクティーを準備してくれる。


「エレファナさま、このサンドイッチは意外とボリュームがありますから、無理はなさらないでください。食事を取りすぎてお腹の具合が悪くなればセルディさまも心配されますので、ほどほどが良いかと」


「そうでした。食べ過ぎは良くないと、セルディさまから教えてもらいました。精霊のためにも気をつけます!」


 受け答えは快活だったが、エレファナは色々と忙しかったためか、すっかりお腹が空いている。


 その姿を微笑ましそうに、少し離れた入り口近くで控えるバートが見守っていた。


(せっかく三つの味があるので、とりあえず一口ずつ食べてみたいです)


 まずはたまごサンドを選ぶ。


 手に取ったパンは、見た目を裏切らずしっとりと柔らかかった。


(わあぁ、おいしそうです。三角形に切られた側面から、刻まれた卵とマヨネーズ、その隣には鮮やかなレタスが覗いていて、食べる前から濃厚な味わいを予感してしまいます!)


 頬張ったパンは思った通り、自然な甘みで柔らかい。


 包まれた具もふんわりとしたとろみがあり、口当たりのなめらかさにうっとりする。


 あえられたマヨネーズの酸味はまろやかだが、アクセントの黒コショウのスパイスが味を引き締めてくれて、飽きのこないおいしさだった。


 みずみずしい鮮緑色のレタスは彩りを添えているだけでなく、しゃきしゃきと張りのある歯ごたえが軽快な音を立てるのが心地良い。


 エレファナははじめの一口で、すでに大満足だった。


(では次の……こちらはパンの外面がかりっと焼けていて、食欲をそそる良い香りがします! 断面には白くてふっくらしているチーズと、つやつやしたピンク色のハムが見えます、きれいです!)


 エレファナはさっそくぱくりと食べると、チーズがとろりと伸びて驚く。


 温かく柔らかい、もっちりとした食感のチーズだった。


 それはしっとりとした塩気の強いハムとの相性が良く、エレファナはついつい食べすぎてしまいそうなその味に夢中になった。


 しかしセルディの食べていた姿をお手本としているかのように、エレファナは食べ物を飲み込むような振る舞いはせず、よくよく味わって品よく食べている。


(本当においしいです。つい食べすぎてしまいたくなるほど! 今のうちにたくさんおかわりをお願いするのは、欲張りでしょうか!? でも、でも……バートに頼んでみてもいいでしょうか……!?)


 エレファナが胸の内で深く自問し続けていると、別室の衣装部屋の方から、ポリーとカミラが選んだ品の確認をしているらしい、明るい話し声が聞こえてくる。


「奥さまは一体、カミラにどんな魔導をかけたのですか?」


 バートの呟きが聞こえて、エレファナは振り返った。





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