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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
3章

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24・すごいことに気づいてしまいました

「い、いいえ……」


 ポリーはいつになく親しげなカミラにずいぶん戸惑っているようだったが、カミラがエレファナのドレスや帽子、手袋について提案しているうちに、次第に会話が弾んでくる。


 気付けば二人は「あれが似合う」「これがかわいい」と、エレファナを実物大の着せ替え人形のように試着させながら、大いに盛り上がっていた。


(ふたりとも私のものを選んでいるだけなのに、とても楽しそうです。あっという間に仲良くなってしまいました)


 カミラはエレファナに植物を模した髪飾りをいくつか選んでから、柱時計を確認する。


「エレファナさま、今日選ばれた品はすぐお渡しするために、オーダーメイドではなくサイズ直しをした既製品でご用意することになっております。とはいえセルディさまからの要望を満たした上質なものですし、近々お届けすることができますので。ぜひ楽しみにしていてくださいね」


「たくさん頼みましたが、カミラさんは大丈夫ですか?」


「もちろんです。持ち運びのため、限られた量しかお見せできなかったのは残念でしたが……」


「いいえ、たくさん見ることができました! こんなに運ぶのは、カミラさんも馬車のお馬さんも大変だったと思います。お帰りになるころには疲れて、ふらふらになってしまうのではないですか?」


「お気遣いありがとうございます。片道二時間程度ですし、私も馬もこういうことに慣れていますから。どうぞご安心ください」


「そうなのですか……でも、あの……」


 エレファナは未だ、カミラの身を案じている。


 その思いが伝わったらしく、カミラは控えめな笑みを深めた。


「そうでした。エレファナさま、靴のサイズ確認がまだでしたので、どうぞこちらへ」


 カミラはエレファナを椅子に腰かけさせると、足の形を確認したり、試着用の靴でサイズ感を見ていく。


「エレファナさまは今日用意させていただいた中で、特に気に入っていただけたものなどはありますか?」


「わかりません。ここに持ってきていただいている品は、全ていいと思いました。それではいけませんか?」


「なるほど。エレファナさまは、とても感性の幅が広い方なのですね。それでしたら信頼のおける方にお任せするのは良い方法です。ただ初めてのこととうかがっていますので、ご自身で選ぶのもひとつの思い出になるかと思います。好きなものや色などはありませんか?」


 エレファナの脳裏に、セルディとはじめて食事をした記憶がぱっと蘇る。


「苺……」


「まぁ、素敵です」


「はい。一緒に分けて食べるときが、一番おいしくなりました」


「特別な思い出なのですね」


 カミラは左手に白い手袋を着用すると、宝飾を収めたひとつのケースからシンプルなデザインの品を取り出した。


「こちらの耳飾りはいかがでしょうか? おそろいの首飾りもありますよ」


「苺の色です!」


「おっしゃる通り、採れたての苺のようなみずみずしい艶が特徴です。それに、」


 カミラは静かな笑みを浮かべ、秘め事のように耳打ちすると、エレファナは頬を染めて瞳を輝かせた。


「確かにこれです。これが今日の中で一番好きです! ポリー、見てください!!」


 エレファナはポリーに向かって先ほどの耳飾りを嬉しそうに掲げ、それと同じ紅玉のはめられた首飾りをカミラに着けてもらっている。


「ポリー、これはどうですか!?」


「まぁ……! エレファナさまの雰囲気が一気に華やいで、とても魅力的ですよ」


「セルディさまは好きでしょうか?」


「もちろんです。エレファナさまが自分で選んだのですから、必ず喜んでくださいます。エレファナさまは、赤い色が好きなのですか?」


「苺の色です、一緒だとおいしかったので! どうやら私は、セルディさまの好きなものが好きなようで……っ!!」


 エレファナは目を見開いて、息をのんだ。


「……っ! ぽ、ポリー、聞いてください! すごいことに気づいてしまいました!!」 


「どうなさいました?」


「な、なんてことでしょう……!」


 偉大な発見をしたかのように、エレファナは興奮冷めやらぬ様子で侍女のそばに寄る。


 そしてポリーの耳元にてのひらを添えると、なかなか大きめの声量で囁いた。


「私はきっと、苺よりセルディさまが好きです!」


「え、ええ……」


 もちろん知っているので拍子抜けするポリーに、エレファナはさらに小声の力を強める。


「しかも大好きです!!」


 その訴えから思いが伝わってくるようで、ポリーも思わず笑ってしまった。


「はい。ポリーは存じておりましたよ、ふふ」


「……! ポリー、すごいです!!」


 その筒抜けのひそひそ話を聞いたカミラは、含みのある笑顔で予告した。


「次回はさらに、エレファナさまが気に入ってくださるものをご用意致します。どうぞ楽しみにお待ちください」


「? 一体なんでしょう」


「エレファナさまにぴったりのものですよ」


(カミラさん、なぞなぞが好きなのでしょうか?)


 そこで呼び鈴が鳴る。



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