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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
3章

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22・これは最低限でしたか!

(ところで私には、一体どれが必要なのでしょうか?)


 エレファナがドルフ帝国に仕えていたころは給金などもなく、ただ与えられたものを使うだけの日々だった。


 そのため今日のように様々な物を前にしても、どう選べばいいのかわからず立ち尽くしていると、カミラが体のサイズを測ってくれる。


 エレファナの左手には傾国の魔女伝説で有名な魔導の枷があるため「痣があるから見られたくない」という建前で左だけ手袋をつけたままにしていたが、カミラは気にする様子もなかった。


 その間に、ポリーが見繕ったドレスやコート、帽子、靴や装飾品を選んではエレファナに確認してもらう。


(私には細かな違いがよくわかりませんが……ポリーが私のために見つけてくれたものは、どれも良い気がします)


 ポリーが選んだ品に対しての見解を述べ、あっという間に選んでいく手際にエレファナは感心しながらも、先ほどから気になっていたことを聞いた。


「でも、こんなに服飾品が必要なのですか? 私のものでしたら二、三枚ほど支給していただければ十分だと……」


 ポリーはエレファナに美しいレースの日傘を差して使い心地を確認しながら、わかりきっている様子で微笑む。


「エレファナさまの以前の生活を想定すれば、やはりそのような反応だとは思っておりました。しかしエレファナさまは、なにも持たずにここへいらしたでしょう。今回は、最低限のものを早急にそろえているのですよ」


「これは最低限でしたか!」


「もちろんセルディさまからも事前に、エレファナさまのご意思を一番にと言い付けられています。ただ選ぶことに不慣れな場合、私がお世話してもいいとも任されておりますので」


「そうでしたか。それなら安心ですね」


 実際エレファナはどれを見せられても同じように思えて困っていたので、ポリーと選べることは心強かった。


 ポリーはエレファナの肌色や雰囲気に合わせつつも、定番の身に付けやすいものから少し意外性を持たせたものまで幅広く揃えていく。


 そうしてエレファナと品を選んでいるうちに、カミラがやってきたころの堅苦しい様子もほぐれ、ポリーの顔や声はいつも以上に明るくなっていった。


「エレファナさま、ご覧ください! こちらは生地の光沢は動きによってオーロラのように変化して神秘的ですよ。エレファナさまのようにどんなものも着こなせる方には、特におすすめしたいものです!!」


「おすすめでしたか!」


「そうですとも……まぁ! こちらはレースの優雅さがエレファナさまのシルエットを美しく飾り立ててくださって……! 本当に、見とれてしまうほどお似合いになりますね!!」


「似合うのですね!」


「それに……あら、見てください! こちらの花柄の刺繍は本当に可憐で……こうしてエレファナさまに重ねると白い肌によく映えて、なんてお美しいのでしょう! エレファナさま以上に着こなせる方がいるとは思えません!!」


「着こなせている? のですか!」


 エレファナは相変わらず品選びに関してはよくわからなかったが、いつになくはしゃいでいるポリーと話しているだけで、なんだか楽しくなってくる。


(あら?)


 エレファナは視線を感じて、少し下がったところでこちらを見ているカミラに目を留めた。


 常に無表情だったはずのその顔に、ふわりとした笑みが浮かんでいることに気づく。


「カミラさんは、どう思いますか?」


 エレファナが自然と声をかけると、カミラは少し戸惑っていたようだが、控えめな微笑を残したまま答えた。




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