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【完結】愛を知らない傾国の魔女は、黒銀の騎士から無自覚に愛着されて幸せです  作者: 入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
1章

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11・不安は消えましたか?

「私は他に、なにをすればいいでしょうか?」


「もう十分だ」


「十分ですか?」


「ああ。いくら君が膨大な魔力を持つとはいえ、二百年もの間飲み食いせず、結界を張り続けて衰弱しきっていたんだ。俺はこのまま目を覚まさない可能性すら考えていた。それが起きたとたん、どこからわいてくるのかわからないやる気を見せられて、もう十分だ。おかげで先ほどまでの不安は消えた」


「不安は消えましたか?」


 自分の言葉をくり返され、セルディはその感情を抱いていたことに、はじめて気づいたかのような顔をした。


「では私にできることは、もうないのでしょうか」


 物足りなさそうに呟くエレファナを見て、セルディはわずかに声の調子を落とす。


「……十分とは言ったが。俺は君に確認したいことや、説明したい事情も色々とある」


(セルディさまが私に……!?)


「ぜひ聞きたいです。お話ししたいです!」


「だが今は話よりも、君の体を休めることが一番優先するべきことだろう」


「そうですか……」


 自然とエレファナの声がしぼむ。


 その様子を見て、セルディは寝台に横たわるエレファナのそばに再び屈んだ。


「もしエレファナが良ければだが。先にひとつだけ、聞いて欲しいことがある」


「……! は、はい、一体どんなお話でしょうか!」


(ついお願いを欲張ってしまいましたが、さらにもうひとついただけるなんて!)


 エレファナはご褒美でも当たったかのように、きらりと目を輝かせてセルディを見上げる。


 しかし銀の瞳は、思い詰めているような真剣さでエレファナを映していた。


「すまなかったな、エレファナ」


「は……ぃ」


「初めて会ったとき、俺は自分の知っていることだけを信じ込み、君にひどい態度を取った」


「……」


 エレファナは珍しく、深刻そうな表情で夫を見つめ返した。


(困りました。セルディさまがなんのことを謝られているのか、私にはちょっとわからないようです。でも謝罪の内容について根掘り葉掘り聞いたら、失礼な気がします。お話の意味を理解もしないで「気になさらないでください」と言うのも変に思われるかもしれません……。あ、私のことなら、すでに変だと思われている気もしますが)


 考え込んでいるエレファナに、セルディはいたわるように囁く。


「無理をする必要はない。もし俺を許せないとしても仕方がないことだ。ただ君が心に傷を受けているのなら、それを少しでも和らげることができればと思い、早めに伝えたかった。少なくともあの時点で、君に非はなかった。あのような態度を取った俺が悪かった」


 セルディの言葉を聞きながら、エレファナはひとつだけ、わかったような気がした。




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