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異世界帰りの妹は、ケダモノになっていましたッ!?  作者: カイ
第1章 異世界からの来た獣たち
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第26話 決まってるだろ、シュワルツェネッガーの真似をするんだよ

――天原衛

 

 三日後。

「突然ですが、自衛隊から榴弾砲を一門もらえることが決まりました」


 由香の本当に突然の発言に、昼飯を食っていた俺と牙門は驚きのあまり手から箸を落としてしまった。

 恵子とカゲトラ以外の隊員も、榴弾砲を貸与どころかもらえるというぶっ飛んだ話を聞いて一様に驚いた顔をしている。

 捜索開始から三日目、マモノ駆除班やオペレーターが宿泊できるホテルが近場に無いので俺の家を隊員の宿泊施設として提供することにした。

 普通の一軒家なので総勢15人が寝泊まりするとなると少々手狭だが、由香が男女の部屋分けはする必要ないと言ってくれたので何とか全員分の寝床を確保することが出来た。

 時間は14時。

 下手に山に入るわけにもいかず、モヤモヤを抱えたまま遅めの昼食を取っていた俺達の元に由香がやってきて爆弾発言を言い放った。


「まっ、マジですか!? 貸与じゃなくて貰えるってマジですかッ!! 型式は何を……」


 由香は興奮した牙門の眼前に手を出して黙る様にうながす。


「対策課に配備されるのは、105mm榴弾砲。防衛装備品ではなく礼砲用に保管している旧式の砲をあくまで礼砲としてゆずってくれるそうです」

「それでもすごいですよッ! 105mm砲なら山を盾にして砲撃支援が出来ます。いける、いけますよッ!!」


 旧式とはいえ105mm榴弾砲の射程は10キロを超える。

 いままで対策課に配備されていた迫撃砲と比べて桁外れに強力な武器が配備されると聞いて牙門は年甲斐もなく興奮している。


「ただ配備されるのはあくまで砲だけです。実弾を撃つなら砲弾は自前で用意する必要があります」


 なるほど、砲弾無しで礼砲としてしか使えないものなら横流ししても大きな問題にはならないと判断したわけか。


「砲弾なんて、由香の金魔法でいくらでも作れるのだ」

「そうなんだよなあ……」


 たとえ砲弾が供給されなくても、金属の形状を自由に変える魔法が使える由香がいれば鉄くずからいくらでも砲弾を作ることが出来る。


「何はともあれ、謎のマモノを狩るために必要な材料は揃いました。さあ皆さん、狩りの時間のはじまですッ!」



――天原恵子


 狩りの時間のはじまり。

 天原家の敷地に停めた指揮者の周囲で、対策課の仲間たちがバタバタと狩りの準備をしていた。

 砲手を務める牙門さんは、到着した105ミリ砲の状態をマニュアル片手に注意深くチェックしている。

 由香は105ミリ砲と共に届けられた鉄くずを砲弾へ加工している。

 他の実働班のメンバーは、砲手である牙門さんをサポートする班と、マモノが逃げたときに追跡するためのドローンを操作する班に分かれてそれぞれ自分が扱う機材のチェックをしている。

 暇をしているのはマモノと直接殴り合う予定の私とカゲトラだけで、私達は縁側でお茶を飲みながら準備している皆の様子を観察していた。


「謎のマモノは私が倒すし、けが人はここで待機でもいいんだぞ」

「カゲトラは獣魔法が弱点ってわけじゃないけど、魔法が直撃したらダメージ小さくないでしょ。私はゴースト魔法を使えば敵の使う獣魔法を相殺できるから盾役として仕事は出来るわよ。それに現場にいないとマモちゃんが襲われたときに守れないし」


 マモちゃんが最前線に行って敵を探すと言った以上、私が後方で待機はない。

 今回、私は人間の姿で接近戦をするカゲトラを援護することにした。

 強力な魔法を使うならマモノ形態に変身しなくてはならないが、右腕が吹き飛んだ状態でマモノ形態になると200キロ超の巨体を三本足で支えることになるので機動力に不安が残る。

 マモノとの戦いで一番重要なのは、攻撃を回避したり危ない時に逃げるための機動力なので右腕が再生するまでは両足で普通に走れる人間形態で戦うしかない。


「ところでお前の兄貴は何をしているんだ? この作戦の中心は105mm砲の砲手をやる牙門と、敵を探して位置情報を砲手に伝える衛なのだ」

「マモちゃんはあそこで……」


 マモちゃんは、105mm砲と一緒に届いた迷彩服とギリースーツを陰干ししていた。

 ちなみにギリースーツは、短冊状の布や糸を多数縫いつけて垂らしたジャケットに草木や小枝などを貼り付けた服で、着用者を風景に溶け込ませて視覚的に発見されにくくする効果がある。

 今朝、届いたばかりの迷彩服とギリースーツを着て山に行ったと思ったらずぶ濡れで帰ってきたけど、何をやろうとしてるのか全く分からない。


「マモちゃん、何してるの?」


 気になってマモちゃんの側に行ってみたら、周囲に鼻が曲がりそうな生乾き臭が充満していた。


「くっさッ!! マモちゃん、なんなのこれ? 服の匂いだけじゃないよね」

「ああ、そこのバケツに入ってる泥の匂いだな。臭いなら近寄らない方がいいぞ」


 匂いの発生源は陰干しされて生乾きになっている迷彩服とギリースーツに加え、陰干ししてる服の隣に置かれているバケツからも発生している。


「こんな悪臭発生させて何がしたいのよ?」


 私が問いただすと、マモちゃんはニンマリと気持ち悪い薄ら笑みを浮かべる。


「決まってるだろ、シュワルツェネッガーの真似をするんだよ」

本作を読んでいただきありがとうございます。

私の作品があなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。

お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。

如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] はらはら読ませていただきました、寄生菌、怖いですねえ、株分けとかされたらめっちゃ怖い。というか、相手は本当にノウウジなのかしら……。 相手が鋭い嗅覚を持っているのなら、そちらからの攻略も、で…
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