はじめまして! ここは煉獄的なところだよ!
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………………
うみみゃあ!
はじめまして! 私は猫の神様!
あなたは猫が大好き過ぎて、飼ってた猫が死んだら生きる気力を失くしちゃったほどの猫好きさんだったから、この場にお呼びしたよ!
え?ここはあなたたち下位世界の住人の概念でいうなら、天国というより煉獄的なところだよ。
そして私は猫の神様だよ! よろしくね!
あー……えっと、下位世界っていうのはね、私たちから見たあなたの生きていた世界や、あなたたちの世界の他にもある世界のこと。
私たちは上位世界の住人、あなたたちの概念で説明すると神様というのに近いから、そんな風に理解してね!
ぶっちゃけ世界の無限多層構造とか折り重なった時空間とかスポンジ状多次元のこととか、詳しく説明しても下位世界の住人にはわかり難いし、あなたたちの世界の科学者という職業の人たちもはっきり理解しきれてないでしょ?
だから私たちがどんなに説明しても、あなたたちが理解できる状態にないし。
それは世界同士の認識や発想できる限界の違いだから、気にしないでね!
別にお互いの能力が優劣してるとかじゃないし、へーきへーき、それぞれの世界はそれぞれの良さがあるから!
それで、本題に戻るんだけど、あなたとあの子の事は最初から最後まで全部見てたよ!
あの子があなたのおうちにお迎えされた時からってことだよ。
短い間だったけど、色んなことがあったよね。
いつも一緒に居たね。
あなたの膝の上やお腹の上で眠るのが好きな子だったね。 すっごい寝相悪くて、時々転がり落ちちゃってたね。
遊んで欲しい時はあなたの指を噛んで、それからぺろぺろ舐めてほんとの喧嘩じゃないよ?じゃれあいたいだけだよ?って主張する子だったね。
ごはん食べるときは一緒についてて欲しい子だったね。 あなたがごはんをあげて、自分の作業しようって離れると付いてきて、鳴いて呼んでごはん皿のところまで戻ると安心して食べ始める子だったね。
ブラッシングしてあげてると途中から自分もあなたの手を一生懸命舐めはじめて、あなたに毛づくろいの仕方教えてあげてるつもりの子だったね。
あなたが帰ってくる時に二階の窓から玄関先を監視して既に待機してて、猛ダッシュで玄関まで走ってくる子だったね。
お昼寝してて目が醒めたら家の中が静かだったから、誰も居なくなって置いてけぼりにされたと思って鳴いてたら、あなたが呼んだのでお部屋に飛び込んできて、ほっとした後「私窓の外見に来ただけですけど?」みたいな態度で強がるところもあったね。
近所の野良猫さんに脅かされて、それ以来トラウマで眠ってる時にうなされてたけど、あなたが声をかけて起こしてあげたら以降は怖い夢を見ることなくなったでしょ?
あれはあなたが夢に出てきた怖い猫さんを追い払ってくれたって思ったから、もう夢に見なくなったんだよ。
あとは本や封筒を齧って破いちゃったり、ティッシュをちらかしたり、縫いぐるみをバラバラにしちゃったりして、喧嘩もしたけど、すぐ仲直りしたでしょ?
そんな風にいつもいつもあなたがあの子を愛して、守っていたから、あの子もあなたが大好きって思ったんだよ。
最後はあなたの腕に抱っこされて逝ったね……。
……うみゅ? なんでそんな悲しそうなの?
あなたはあの子のこと一杯幸せにしてあげたでしょ?
全然幸せにさせられた自信がない、不幸にしたことのほうが多いだなんて言わないで!
確かにたった4年、寿命さえ全うしてないけど、最後まで長生きできるわけじゃないのはあなたたちだって同じでしょ?
約束とか誓ったこととか、全部守れるわけじゃないし不可能なこともあるのは当たり前でしょ?
あの子はあなたに幸せにしてもらったんだよ、嘘ついたとか裏切ったとか、口でいうほど本気になって愛することができなかったから死なせただなんて……そんな悲しいこと言わないで。
悲しかったことや失望したことより、幸せだった思い出の方をたくさん作ったはずだよ!
トータルであの子が幸福だったなら、それで良くない? ダメなの? 自分を許せない?
確かに、「所詮猫でしょ」とか言う人はいるよ? でもそんなの関係無いでしょ?
あなたはあの子を愛したいという気持ちがあったし、誰にも否定することは……つまり自分に少しでもそんな気持ちがあって、本当の本気で全力で愛してあげられなかったから、死なせることになって責任を感じているし、あの子を不幸にしたと思ってるし、自分自身を憎んでいるって事なの?
うみゅみゅ……ちょっと困ったよ……。
えっとね、あなたをここに呼んだのは、あなたがあの子を一杯愛してくれたから、ご褒美として一個上の上位世界にシフトさせてあげる!ってするつもりだったの。
上位世界はね、あなたたちの概念でいうと天国的なところ。
あなたたちの世界の物理法則よりももっと構造が複雑だけど、科学よりももっと深く世界のことが理解できて、例えばあなたたちの一個上の世界の場合だと考えるだけで物質や電子に干渉して色んなことができるようになったり、そのさらに上は……え? その世界にあの子はいないよ?
あの子はもともとあなたの一個下の下位世界からご褒美としてあなたの世界にシフトしてきて、猫が好きなあなたのところにお迎えされるようにした子だもの。
命が終わったから元の下位世界に戻っているよ。 さらに上の上位世界やあなたの世界に留まることも望まなかったし。
……上位世界には興味ないの? むしろあの子と同じところに行きたいの?
うみゅう……あのね、下位世界っていうのは、あなたたちの概念でいうと、地獄って言われてる場所で……あっ、ぶっきょーとかきりすときょーとかの地獄とは違うよ?
あれはあくまであなたたちの空想上のというか、下位世界をあなたたちなりに解釈したときの例え話的なものに、誇張や脚色が入ったものだから、そのままああいう世界があるわけじゃないし。
ただ、あなたたちの世界より構造が単純で、できる事の幅が少なくて、不便で、すっごい雑なの。
なんで言ったらいいのかなあ? さっきも言ったみたいにその世界にはその世界の良さとか、その世界だからこそ出来るものや存在するものが違うから、酷い世界というわけじゃないけど、あんまりおすすめできない所だよ?
……まあ、その下位世界に行きたいっていう上位世界の住人は、あなたの他にもたくさん居るんだけど。
でもそういう興味本位とか、ちゅーにびょー的な逆張りあまのじゃくさんとか、今居る世界の良さがわからなくなったとかじゃないんでしょ?
どうしてもあの子と同じ下位世界に行きたいの? あの子を見つけて、今度こそ幸せにする約束を果たしたいって思うの?
しょうがないか。 どんな上位世界に行っても、あなたがそれを天国だと思えないし幸せになれないんじゃ、ぜんぜんご褒美になってないし。
あなたがあなた自身を心から幸せだと思えることを果たせた方がいいよ。
すっごい特例だけど、普通は逆なんだけど……あなたを下位世界にシフトさせてあげることにするよ!
え? 下位世界って具体的にどんなところなのかって?
あなたたちの世界で今流行ってるゲームみたいな世界だよ! がんばってね!
うみみゃあ!




