終章−1 焼け野が原の来訪者
シャラとサナが対峙して二ヶ月が過ぎた。
シャラは、月が照らす焼け野が原の中央に立っている。ラストラの亡骸に寄り添うように立っている。
右腕がない。
右耳がない。
そろそろ右眼が落ちそうになっている。既に右眼に視力はない。
あの夜、シャラが自ら右腕を腐らせた夜。
サナが作った毒は、シャラの「自分の能力への免疫」も破壊した。
ラストラから与えられた「能力」は、人間のシャラにとっては「恐ろしい異物」。シャラ自身の身体への攻撃は続いている。
このまま私は少しずつ腐り果てていくのだろう。少しずつ。
何十年? 何百年? 何千年?
これからどれほど苦しみ続けるのか……。
ここはラストラと過ごした草原だった場所。
草も周囲の森の木々も真っ黒に燃え尽きていた。
サナを殺し、怨みを晴らしてからこの地に戻ってきていたら……。
今以上、苦しんでいるだろう。
ラストラはそんなことを望んでいなかった。
母はそんなことを望んでいなかった。
確信している。
後悔はない。
自分の決断に満足している。
――――
「ねえ」
背後から声を掛けられた。
何故か驚かなかった。声の主も簡単に分かった。
振り向く。左眼だけで見る。
サナが立っている。
「ねえ、そのまま死ぬつもり?」
「それを見に来たの?」
シャラは心にもない皮肉を言った。
サナもそれを見抜き無視した。
「よかったら使って」
足元に小さなガラス瓶を置く。液体が揺れている。
「これであんたとは借りもないし、貸しもないわ。また私を殺したくなったら来なさいよ」
シャラは何も応えない。
月明かりの下、サナは去っていく。
シャラの足元には新たな芽が生えていた。




