4−2 乞食が見たモノ
翌朝、まだ薄暗い道を老齢の乞食が歩いていた。
以前は、貴金属店だったらしい大きな建物を目指している。
今はもう、廃墟と化している建物。
昨夜遅く、その中に四人の男と一人の女が入っていくのを見た。
女はどう見ても余所者だった。長い髪の女。
今はもう、全てを奪われ死んでいるだろう。
乞食は、女の死体の髪の毛を金にしようと企てている。「あいつらもそこまではしないだろう」と踏んでいる。
「ん……?」
乞食は異変を感じた。
悪臭が漂っている。自身も強烈な悪臭を放っているが、そんな乞食でも気付く悪臭。
建物へ足を進める度に強くなる。
臭え……。なんなんだよ……。
入口前まで来ると、呼吸も辛くなってきた。大きな扉を開けばどうなるかは、乞食も想像がついた。
――引き返せ。
それが正解だと分かりながらも、乞食は扉を開いた。
暗い屋内に、扉の動きに合わせて外から光が差し込む。
暗い屋内から、扉の動きに合わせて外に悪臭が溢れ出す。
鼻や喉だけでなく、乞食は眼まで痛みを感じる。
乞食は痛む眼で見た。
半固形の赤黒い大量の物質が、床上で緩やかに流れていた。
湯気が上がっている。
所々に、真っ黒い髪の毛の塊や白い骨の欠片が混ざっている。
これは……、これは人なのか?
乞食は激しく嘔吐した。
碌に食事も出来ていなかったので、殆ど胃液だった。




