33/49
3−3 知らせ
「『罹ったら助からない』と言われ続けていた難病の特効薬を天才が完成させた」との知らせはリカーサ村にまで届いた。
「完成させた天才がとんでもない美人」という情報も合わせて。
ルーミー夫妻も夕食時、その事を話題にした。
「もっと詳しく聞かせて」
シャラの一言は、二人を驚かせた。
この家で一緒に暮らし始めて五年。
シャラはこの五年間、自発的に発言しなかったから。
ルーミー夫妻は、この外見も名前も亡くした娘とそっくりな少女の事を殆ど知らない。
言葉が話せる事は既に知っている。
感情もあり、最低限の礼儀を弁ている事も知っている。
シャラは二人に感謝の意志は伝えるし、手伝える家事などは率先してやっていたから。
ただ、自分の過去は話さない。シャラ自身が、故意に蓋をしている様に。
そんなシャラが「天才薬師」に興味を示している。二人は不思議に感じつつも嬉しくなり、翌日から「天才薬師」の情報を集め始めた。
シャラは、自分の人生が再び動き始めた事を感じている。
黒い瞳がほんのり赤く染まっていく。
シャラ・ルーミー、母親を腐らせて十五年、父親を腐らせて五年が経っていた。




