2−18 静まるシャラ
洞窟の先を少女が――、シャラが見たときシャラの身体に異変が生じた。
「ぐっ……!?」
冷たい岩の地面に座り込み、嘔吐した。全身が軋んでいる。頭が酷く痛い。
何よ。ここまで来て……。
シャラは全てを覚えている。「怒りに我を忘れた」との逃げ口上など通じない。
――――
あのとき、食料を溜めていた洞穴から森に出た。ラストラの身を案じたから。
周囲に人気がない事を確認しながら闇の中、草原へ向かった。
そこで木々の隙間から見てしまう。
ラストラが喉を切り裂かれる瞬間を。
ラストラの絶命が、はっきりとシャラの身体に――、意識以上に身体に伝わった。
ドクリ――
シャラは自分の身体の中で、なにかが暴れている事に気付いた。
周囲のあらゆる植物が腐り始めている。
シャラの身体が震えた。
「わたしたちが何をしたと言うのよ?」
納得いかない理不尽さに、怒りにシャラは呟いた。
――許さないわ、絶対に。
シャラは、体内で暴れているなにかを瞬時に理解した。
それの意味を。
それの効果を。
それの使い方を。
文字通り、「生まれたときから」一緒にいたのだから、分からない訳がない。簡単に使いこなせる。
ラストラを殺した男を腐らせたとき、シャラは思った。
ああ、ラストラが「人間など取るに足らぬ」と言っていたのはこういう事か。脆すぎる。あまりにも脆すぎる。こんなのがラストラに挑んでいたのか。
同時に、ラストラは「この能力」を自分に渡したせいで死んだ事も理解した。
しかし、シャラはその事実を切り捨てた。感傷的になっているときではない。
まず、皆殺しにする。隠れていても位置は勝手に伝わってくる。
ラストラの事を考えるのはその後でいい。
――――
――ドクリ
ラストラが殺されたとき、暴れだしたなにかが静まろうとしている。それに引きずり込まれるように、シャラの意識と身体も静まろうとしている。
あの女、後回しにするべきじゃなかった。
多分、あいつが……。
シャラは倒れた。自分が嘔吐したものの上に。
べちゃり
不快な音が洞窟内に響いた。




