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閑話:羽月①

たまに羽月が出てきます。

ごめんなさい。(先に謝罪するスタンス)

 優李と奏に拒絶されてから、私の世界は灰色になってしまった。


 私が裏切ってしまったのだから、バレた時点で別れることになるのだろうと思っていた。だけど、一切の関係を断たれるとは思ってもみなかったのだ。

 優李は気付いたら私の隣に当たり前のようにいて、私たちの関係は切っても切れない家族同然の関係性だと思っていた。だから私が悪いことをしても、最終的には許してくれるものだと勘違いしていた。


 私は優李に拒絶されたときに気付いてしまったのだ。私たちは家族ではないし、親戚でもない。他人なのだ、ということに。


 どうしても優李に謝罪したい私は、もう一度しっかり話をしたくて、華ちゃんにお願いをして優李と会わせてもらおうとした。だけど、それは華ちゃんからの拒絶により失敗してしまった。


 華ちゃんは私のことを羽月ちゃんと呼び、本当の姉のように慕ってくれていた。しかし、久しぶりに会った華ちゃんが私を見る目はとても冷たく、呼び方も羽月さんになっていた。


 ひょっとしたら、優李が全てを家族全員に話してしまったのかも知れないと思ったがそれは間違いだった。




 ー




「私に何のようですか、羽月さん」



 私の呼び出しに応じて、公園に来てくれた華ちゃんは、到着するなり感情の入っていない声色で私に尋ねた。今までとはあまりにも違う華ちゃんに動揺してしまった。



「え、えっとね。華ちゃんはさ、優李と別れたことは知ってるよね? ちょっとすれ違いがあったから、もう一度お話をしてまた元の関係に戻れたらなって思ってさ。華ちゃん良かったら協力してくれないかな?」


「お断りします」


「………………え?」


「ちょっとしたすれ違いですか? よくもそんなことを言えましたね? 羽月さんってゆー兄ちゃんのこと本当に好きだったんですか? 私は正直あなたのことを軽蔑しています」


「待って、どうしてそんなことを言うの? 優李のことは好きよ。今でも大好きだから華ちゃんにお願いをしてるのよ」


「はぁ……」



 大きな溜息をつくと華ちゃんは、敵意を剥き出しにした目で私のことを睨みつけてきた。



「羽月さん。じゃあ何でゆー兄ちゃん以外の人とホテルなんて行ってたんですか?」



 まさか華ちゃんが知ってると思わなかった私は、驚きのあまり声を失ってしまった。何とか気を取り直して、「優李に聞いたの?」と尋ねた。



「違いますよ。ゆー兄ちゃんから別れたことは聞きましたが、あなたが裏切って他の男と関係を持ってることは聞いていません」


「………じゃ、じゃあなんで?」


「羽月さん、もうちょっと考えてホテル入った方がいいですよ? この街の人がよく行く駅の、しかも駅前にあるホテルを使うなんて、見つけてくださいって言ってるようなものですよ」



 ついに私は華ちゃんの言葉で顔を覆ってしまった。そんな私を鼻で笑って華ちゃんは話を続ける。



「最初はゆー兄ちゃんのこと愛想尽かせちゃったのかな? って思ってたんです。だって、ゆー兄ちゃんは別れるって言うちょっと前まで羽月さんのことが本当に大好きだったんですから。だけど、その話を聞いた3日後に、あなたが別の男とホテルに入ったところを見たんですよ。そのときに全てが分かりました。あなたがゆー兄ちゃんのことを裏切ったんだなって」


「あっ……そ、んな………」


「私はゆー兄ちゃんと羽月さんが別れたって聞いて、とても悲しかったです。いつか恋人という関係じゃなくても、また仲の良い幼馴染みに戻ってくれるって信じてました。だけど、まさかゆー兄ちゃんが親友って呼んでる人とホテルに行くような関係だったとは思いませんでしたよ。なので、私はゆー兄ちゃんを傷つけたあなたのことを絶対に許しません。これから私のことを見かけても、絶対に声をかけないでください。今もあなたのことを叩かないように我慢するので大変なんです」



 感情をぶつけるように一息で言い切った華ちゃんが、項垂れた私の返答を待たずに出口に向かって歩いて行く。そして、何かを思い出したのか、立ち止まりこちらに振り返った。



「あなたがゆー兄ちゃんへした行いは、ママたちには言ってないので安心してください。娘がクズだったとしても、母親同士の仲まで裂くことはないかなってゆー兄ちゃんも思ってると思うので。それでは、さようなら」



 華ちゃんが公園から出ても、私はそのままベンチに座っていた。


 まさか華ちゃんにも見られてるとは思わなかったわ。

 バレるときに一気にバレちゃうものなのね。

 完全に自業自得とは言え、自分の馬鹿らしさに笑いが溢れてしまう。私はこれで完全に優李と接点を持つことができなくなってしまった。


 学校で話しかけようとしても、奏が絶対に止めてくるだろうし、優李が素直に聞いてくれるとも思えない。それはそうよね。だって優李が奏とそういう関係になってたら、私も絶対に許さなかったと思うもの。


 優李は失ってしまった。

 でもまだ光輝がいるから大丈夫よね。

 この間奏が変なことを言ってたけど、光輝はキッパリと否定してたし、疾しいことなんてあるわけがない。


 今までは公にできない関係だったから、デートとか出来なかったけど、これからは誰にも遠慮することないんだから。優李で満たしていたものを光輝で満たしてもらえばいいんだもの。



 だって、私のことを愛してるって言ってくれたものね、光輝。

読んでくださりありがとうございます。

とっても嬉しいです!

もし、面白い! 続きが読みたい! と思ってくださった方は、評価やブックマークなどをして応援してくださると幸せな気持ちになって舞い上がってしまいます。

頑張って完結させるので、最後までお付き合い頂けたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 妹マジ天使
[良い点] 一見優李に依存していた風に見えていても、 その実光輝が支えてくれるならと割り切るメンタル。 やはり重要なのは『相手が誰なのか』ではなく 『愛される自分』なのではなかろうか、この娘
[一言] またもや自分の馬鹿らしさに笑ってしまっていますが 全然理解してる感じはしなくてw 間男に捨てられても馬鹿らしさに笑うんだろうな
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