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336『アンナリーナとライオネル』

「そなたは変わらぬの」


「陛下も、お元気そうでなにより」


「儂はもう……老いた。

 今では孫が12人、曽孫が21人じゃ」


 賢王と呼ばれているハルメトリア国王ライオネルは、力なく笑った。

 それも無理はない。

 彼はもうすぐ90才、この世界のヒト族の寿命をはるかに越えている。

 対してアンナリーナは、初めてその姿を見せた時と変わらずに見える。


「そなたが儂の前に姿を現わすとは、今回は一体何があったのだ?」


 前回アンナリーナが王宮に参内したのは、ハルメトリア国の辺境で治療のしようがない流行病が発現した時……たしか20年ほど前だった。


「今回はお暇に。

 そろそろこの姿で、人々との生活を共にする事に限界を感じていたのですよ。

 私はこの通り、見かけ上はほとんど年をとりません。

 ……その事が気に入らない者に嫌がらせされる事も増えてきましたしね」


 特に宗教関係者の嫌がらせが増えていた。

 彼らは、自分たちが病を患った時服用した薬がどこからもたらされているか、知らないのだろうか。

 アンナリーナがこの国に現れて約50年、今は大規模な製薬工場でスケルトンたちが日夜、調薬している事を知るものは少ない。

 だが、基本的に安価な薬は、この国の平均寿命を著しく押し上げていたのだ。


「そう、か。

 すまぬ……儂には謝る事しか出来ぬ」


 やっと繋いできた、縁の細い糸が切れてしまう。

 元よりこの縁はライオネルとアンナリーナの間の、個人的なものだ。

 国家自体に興味のないアンナリーナは、遠くない将来ライオネルが居なくなった後、彼の後継者と懇意にすることはないだろう。


「うふふ、ライオネル様とは長い付き合いですしね。

 お別れの挨拶くらいしないと。私はそんな不忠義者ではないですし」


 皮肉が込められた言葉がビシビシと叩きつけられてくる。


「それで、これからどうするのだ?」


「私は自由ですから。

 どこか、気まぐれに動くだけですわ」


 アンナリーナが浮島に自身の国を作っているのは、首脳陣ならば誰もが知っている事だ。

 その浮島は、今は自在に移動する事が出来るようになっていた。


「そなたには本当に世話になった。

 重ねて礼を言う」


「そんな、ライオネル様と私の仲ではありませんか。

 もう、直接お会いする事は無いでしょうが、私が薬師として一番お世話になった国……これからも見守っております」


 目立つ事を好まないアンナリーナは、それでも何彼と世話を焼いてくれた。

 ライオネルに向かって綺麗なカーテシーをして、アンナリーナは退出していく。

 ハルメトリア国王ライオネルは、アンナリーナと知り合った頃を思い出し、溜息した。


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