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330『滅びの行軍』

「得心できたか?」


 さっさと歩き出したアンナリーナに並んだテオドールが、大きな身体を曲げ覗き込んで言う。


「元々、もうそんなに気にしてないし。

 そう……これはけじめかな。最後の」


 アンナリーナの横顔は厳しい。

 それは彼女が納得しようとしているのだろう。


「それならいいんだ。

 悪いな、余計な気を回して」


「ううん、ありがと」


 アンナリーナの小さな手が、隣を歩くテオドールの大きな手に重ねられる。

 そして、そっと指を握った。


 それからしばらく、村を出るまでふたりは無言だった。



 村の外をしばらく歩いて拓けた土地を見つけると、セトが竜化して黒光りする羽を広げた。


「ちょっと時間がかかるから “ 箱部屋 “を出すね」


 これは複数でセトでの移動をする場合、快適に過ごすために作られた、馬車の乗車部分のようなものである。

 それをセトの身体に吊るし、飛ぶのだ。


「セト、いつもあなただけに負担をかけてごめんなさい。

 これからは移動用のドラゴンも増やすつもりでいるわ」


「俺は主人を乗せて飛ぶのが心底嬉しいのだ。

 これからも主人の騎竜の座は誰にも渡さん」


「うんうん、これからもよろしく!」


 男心の複雑さを理解できないアンナリーナを、セトが気の毒だとテオドールは思う。

 テオドールは同じ女を愛する男として、セトの苦しい胸のうちは十分理解していた。

 彼は決してその心のうちを明らかにしないだろうが、その想いはひしひしと伝わってくる。

 だからこそテオドールは何も言わない。




 隣国サンジェラスを引き裂いているスタンピートの先端に至るまで半日、そこからは月のない暗闇のなか夜空を飛び続け、ようやく大元のダンジョンにたどり着いたのは夜明け近くだった。


「しかし凄いね。

 今までいくつもスタンピートは見てきたけど、確かにこれは最大規模だよ。

 いったいどれだけ湧き続けるんだろう」


 スタンピートは、最初は浅層の弱い魔獣から溢れ出し、それが徐々に強い魔獣に移り変わっていく。

 それなのにまだホブゴブリンやオーク、オーガなどの亜種が湧いているのだ。これまでどれほどの量が湧いたのか計り知れない、恐ろしいダンジョンだ。


「これは……

 一匹ずつは大した脅威ではないが、圧倒的な物量に任した行軍だ。

 これでは小国などひとたまりもなかっただろう」


 うねる大蛇のような、生き物を呑み込みそれらを自分たちの糧に変え、進んでいく魔獣たち。

 テオドールはそれを見て総毛立っていた。


「さて、始めましょうか」


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