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321『貶めようとするもの』

 アンナリーナが浮島を前にはしゃぎ過ぎて、公爵邸に帰ってきたのは真夜中になっていた。

 さすがに中に入るわけにはいかず、アンナリーナは早速持って帰ってきた小型の浮島(公爵邸の半分もない)を出して、そこで野営する事にする。

 高度は約100m、明るくなれば一目で気づくだろう距離だ。



 タープを張って、テーブルや椅子、簡易ベッドを出し遅い夕食を摂る。

 隅に吊るした魔導ランプが唯一の灯りだが今の2人にとって十分だった。


「しかし、これほど気候が違うって、信じられないよね」


 魔人領では厳冬期直前だったが、こちらでは初夏の陽気だ。

 今も心地よい風が吹いていて、地上では少し蒸し暑いかもしれない。


「領都に帰れば冬かぁ〜

 あちらでの冬籠りの準備は終わってるんだよね?」


「俺たちが向こうに戻れるとは思ってもいないだろうからな。

 一応、それらしく見えるように用意している」


「この北半球でダンジョン巡りしても面白そうだし、セトたちもずっと篭っているのは退屈でしょう?」


「俺らは向こうの大陸でもやる事はあるが、主人が言うのなら喜んで参加させてもらう」


 セトとテオドールは基本、アンナリーナの護衛を務めている。

 はっきり言えば無茶を無茶と思わないアンナリーナのストッパーなわけだが、アンナリーナは彼らの苦労を知らない。


「主人、そろそろ休んだ方がいいと思う。

 ほら、あちらの空が白んできた」


 簡易ベッドの寝袋式の布団に潜り込み、眠りにつく。

 その時アンナリーナは、このあとに起きる騒動を予測すらせずに呑気に惰眠を貪っていた。




 その悲鳴に最初に気づいたのは、当然のことながらセトだった。

 夜明け前の短い時間、仮眠をとった彼はそのほかは夜番をしていたのだ。

 アンナリーナも悲鳴に気づいて目を覚ましたが、いささかぼんやりとしている。


「主人、邸で何かあったようだ」


 今日は何も予定のないアンナリーナは、1日リフレッシュしようと思っていたのだが。


「わかった、行くよ!」


 2人は浮島から飛び降りて【飛行】で邸のバルコニーに向かう。そしてそのまま中に入ると、そこはジャクリーヌの居室のはずだ。

 今の公爵邸で何かトラブルが起きそうなのはここしかない。そんな思いで飛び込んできたが、そこではアンナリーナの考えを大きく上回る事が起きていた。


「誰か!誰かっ! お嬢様が!!」


 取り乱す乳母。

 テーブルに突っ伏して動かないジャクリーヌ。

 そして見知らぬ青年。彼はジャクリーヌの上体を起こそうとしている。


「触らないで!」


 すでに【解析】をかけ、ジャクリーヌのその状態を知ったアンナリーナは毒状態異常無効の魔法をかけ、解毒薬を取り出した。


「そちらこそ近づかないでもらおうか。僕はジャクリーヌ様のお薬を任されている薬師だ。

 おまえ、ジャクリーヌ様に何をした?」


「はあ? いったい何を言ってるのかわからないわ」


「とぼけるんじゃない!

 きさまがジャクリーヌ様に毒を盛ったのはわかっているんだぞ!

 証人もいるんだ」


 青年はアンナリーナを貶める事に夢中でジャクリーヌをかえりみようとしない。

 今はもうアンナリーナが解毒したので問題ないが、本来解毒しなければならない青年は一切何もしない。

 と、言う事は、そう言う事なのだ。

 彼にジャクリーヌを救う気はない。

 アンナリーナが思うに、これは決定的だ。


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