319『料理講習会?』
アンナリーナの言う通りに調理していた料理人たちは、その特殊な下ごしらえに目を剥いた。
今まで、肉と言えば焼くか煮るもの。
それもこのように肉本来の形が跡形もないほどにみじん切りにするなど想像もつかなかった。
「ではそれを包丁で叩いて下さい。
こんな感じで」
肉の形がまったくなくなるほど叩くとそれを手で捏ねる。
これは粘りけが出てくるまでしっかりと捏ねさせられた。
それと同時進行だったのはトマトソースだ。
幸いトマトの湯むきは、今までもやっていたので、それを粗みじんに刻んでもらう。
今夜の料理様にブイヨンが用意されていたので、少し薄めたそれで煮込んでいく。
ハンバーグのたねの方に戻ると、いい感じに捏ねられていた。
それに塩、胡椒、すりおろした生姜を加え、また捏ねていく。
そしてつなぎに牛乳に浸したパン粉を加えてもう一度捏ねる。
そのあとは小判型に成形するのだが、この時あまり厚くせず、真ん中にくぼみを作るのがコツだ。
トマトが煮崩れてきたら塩、胡椒、砂糖などで味を整える。
ブイヨンで下味がついているのであまりしつこくしないでおいた。
あと、とろみをつけるのにはちょうどコーンスターチのようなものがあったので、それを使うことにする。
「あとは焼くだけなのでもうひとつ、ジャクリーヌ様の分を作りましょう。
今の彼女の胃腸では、ハンバーグは重たすぎますからね」
アンナリーナは、次は鳥肉を持ってこさせて、先ほどと同じようにひき肉を作らせた。
そして野菜貯蔵庫から人参やひよこ豆などを取ってこさせた。
「ひよこ豆は柔らかく煮て下さい。
下味は塩だけで、人参玉葱は出来るだけ細かくみじん切りして下さい」
あとは先ほどのハンバーグのたねとやり方は変わらない。
ただ鳥ひき肉は先ほど以上に徹底的に叩き、捏ねた。本当はもっとなめらかになるようすり鉢ですりたいのだが、ないものはしょうがない。
だから徹底的に捏ねてもらった。
そして生姜汁、塩、胡椒、砂糖を入れ、小麦粉をつなぎに捏ねてもらう。
最後に具を入れてたねの出来上がりだ。
「これは【つみれ】といって、ハンバーグの応用です。
次は一口大に丸く成形して下さい」
アンナリーナは先ほどのブイヨンの味を少し濃いめに整え、つみれを投入していく。
浮き上がってきたら出来上がりだ。
ハンバーグは両面に焼き色をつけたらオーブンに入れて焼く。
「はい、ハンバーグと鳥のつくねスープが出来上がりました。
どうぞ味見して下さい」
もちろん同じものが夕食として老公爵とジャクリーヌに出されたのだが、ふたりとも大絶賛。
後日ハンバーグを食したジャクリーヌは、思わず涙したと言う。




