304『浮島はどこに?』
ダンジョンと首都と学院と、アンナリーナは1日のうちの何時間かずつ、各場所に現れて精力的に行動していた。
そして今、学院のある教授の部屋に飛び込んだアンナリーナは興奮を隠せずにいた。
「リーナ殿、びっくりさせないでくれたまえよ」
老人が多い、この学院の教授陣の中で、彼は数少ない壮年……推定50代であろう彼は魔人領随一の地学の専門家である。
「キャンティ教授、質問があります」
「言ってみたまえ」
「ある本を読んで知ったのですが、“ 浮島 ”というものがあるって!」
アンナリーナはまた興奮してきたようだ。
キャンティ教授の周りをグルグルと回り始め「浮島」「浮島」と呟いている。
「【浮島】について知りたいのかい?」
「はい!浮島はどこにあるのですか?」
教授は壁にかけられた地図を、先がカギ型になった棒で引き寄せた。
そのまま下に引っ張るとアンナリーナにも見やすいところまで近づいてきた。
「君もよく知っている通り、ここが南大陸……我々のいる場所はここ。
そしてこの細い部分で繋がっているのが【北大陸】だ。
君の知りたがっている【浮島】は、北大陸の最北部、この国の北端に分布しているのだよ」
「わかりました!ありがとうございましたっ!!」
アンナリーナは先日エッケハルトと話した事を思い出していた。
「確か、この間のオークションで競り負けた人たちが北の国の貴族だったわね」
馬車に飛び乗り、ウェンライトに向かう間も気が急いて、そわそわしているところをテオドールに笑われてしまう。だが今はそんな事は気にならないアンナリーナだった。
「エッケハルトさーん!!」
来客用に贅を凝らしたエントランスを抜けて、応接室と事務所のある方に突進する。
騒ぎを聞きつけて顔を出したエッケハルトに、アンナリーナは飛びついた。
「リーナ様?一体どうしました?」
「あのね、この間アムリタで競り負けた貴族の人、ちょっと用事があるので紹介して下さい!!」
エッケハルトは面食らってしまった。
実は昨日も老公爵から、出品者をしつこく聞かれたところだったのだ。
だがそれは、今回の日程で最後の訪問だった。いよいよ孫娘の容態がよろしくなく、老公爵は今日この首都を発つはずだった。
昨日聞いたその出発時間は、もう過ぎている。
「わかったわ、追いかけてみる」
エッケハルトから詳しい話を聞くと、またアンナリーナは飛び出していった。
苦笑いしたテオドールが目礼して、後を追う。




