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303『従魔 ケフィン』

 自我のないアンデッドから了承を引き出すのは難しい。

 まず、どうやって意思疎通を図るのか、これも無理に近いものがある。

 だからアンナリーナは力ずくで従わせる事にした。

 ダンジョン産のアンデッドには確かに自我はないが、弱肉強食の理は本能的に持っているようだ。

 アンナリーナはこれに賭けた。

 己の、溢れんばかりの力を示し、アンデッド・ケフィンに従属を迫る。


 そしてアンデッド・ケフィンはひれ伏した。


「あなたの名はケフィン。

 これからあなたは私に従属し、命令厳守です。

 わかりましたか?」


「は……ぃ」


 呻き声のような、喉から吐き出す音のような返事が聞こえ、アンデッド・ケフィンはケフィンとなり、魔法陣のエフェクトに包まれた。

 そしてその光が収まると、座り込んでいるが顔を上げて、多少濁った瞳がアンナリーナを見つめていた。


「言葉は発しにくいのね。

 いいのよ。返事は頷くかかぶりを振ってくれたら……そう、上手だね」


 アンナリーナの言葉に早速頷いて見せたケフィンに細めた目を向ける。


「ここにいるネロがアンデッドを取りまとめているわ。

 普段は彼の下に付きなさい。

 ネロ、任せるわ」


「承りました」


 ネロが深々と頭を下げる。

 それに吊られてケフィンもその場で頭を下げた。



 アンナリーナに任されたネロは、ケフィンを連れてツリーハウスの部屋に戻った。

 まずは部屋の用意だ。

 それとケフィンの状態を正確に把握しなければならない。

 ネロはアンナリーナが付与を行う前のデータを取るべくケフィンを伴って自身の研究室に向かった。



「ああ、疲れた」


 ネロがケフィンを連れて馬車の中に入っていき、その気配が遠ざかるとアンナリーナはその場にあった椅子に座り込んだ。


「リーナ、大丈夫か?」


「う〜ん、アレは辛いわ。

 あまりやりたくない事だね」


 アンデッドに対する力ずくのティムは負担が大きい。

 出来れば、自身がアンデッドを創り出す方がよほど効率が良いと結論を出した。


「あとは少しずつ様子を見て付与していくわ」


 アンナリーナにまたひとつ仕事が増えた。




 その頃、魔人領の首都ではアンナリーナが消えた事で、小さくない波紋が起きていた。

 そのひとつ、某公爵は未だに劣化版アムリタの出品者を探していたし、くだんの王子殿下も国元からの依頼を受けてアンナリーナの事を探っていた。

 特に某公爵……某国のテラシォン公爵はもうあまり時間が残されていない孫娘の為に必死になっていた。


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