301『アンデッドへの思い』
アンナリーナはこの場に来る前に、ネロとツァーリを呼び話をしていた。
彼らは元死体であるアンデッドだ。
「アンデッドをティムですか?
私はした事はないですね」
アンナリーナが聞きたいのは、ティムしたアンデッドが自我を持つかどうか、である。
今はもう、ネロの方が死霊魔法のレベルが高くなっていた。
「もし、もしも例のアンデッドを何とかするにしてもあのままじゃ、ね」
アンナリーナやネロがアンデッドにしたのは “ 普通に ”死んでいる遺体、もしくは魔獣の骸だ。
ティムするにしても今までアンデッドに対してその必要性を感じなかった。
意思疎通出来ないかもしれない、と言うのも問題だ。
「家族や知人はどう思うかわからないけど、もうアレは姿形だけは変わらない、まったく別物だもの。
安らかに眠らせてあげた方がいいのかもね。
まあ、あなたたちを甦らせた私が言えたことじゃないけど」
ネロとツァーリは感謝を込めて頭を下げた。
と、言うことを思いながらヤルディンを見た。
彼は軽々しく決められないのだろう。
その口は一文字に固く食い締められている。
「ヤルディンさん、しばらく時間を置きましょうか。
第一、彼が再び姿を現わすかどうかわかりませんし」
ダンジョンに現れたアンデッドについて、今のところ何もわかっていないのだ。
「しばらくの間、62階層にベースを置いて攻略を進めます」
なんとも居心地の悪い会談から戻ったアンナリーナは今、62階層の移動住居型馬車の中にいた。
昼餉を食べ損なったので、今日は早めの夕餉だ。
「今夜は誰が夜番をしてくれるのかな?
一応、打ち合わせをしておきたいのだけど」
「俺がやります」
イジが手を挙げた。
そしてコーロナヴァルが続く。
「うん、2人ともよろしく。
夜間は結界を強化するので、基本あなたたちはアンデッドが寄って来ないか監視するだけでいいから」
はてさて、今夜は現れるだろうか。
ダンジョンの中には昼夜があり、出現する魔獣の種類が違ったり、強化されたりする。
今夜も結界の外には魔獣の姿があちこちに見え、こちらを窺っている。
そして夜半を回ると闇は一層濃くなりあたりに靄が立ち込め始めた。
いかにも “ 出そうな ”雰囲気である。
そして予想に違わず突然現れたそれは、ゆっくりと歩みを進めて結界に行き当たった。
また、結界を引っ掻いている。
まるで中に入れてくれ、と叫んでいるような様子で、事情を知るものたちの哀れを誘う。




