299『アンデッドの身元』
思いもよらないほど早く、冒険者ギルドに帰還してきたアンナリーナたちにギルド内はどよめき、職員が慌てて駆け寄ってきた。
「何かございましたか?!」
「うん、ちょっと。
ヤルディンさんを呼んでくれるかな?」
アンナリーナたちは応接室に案内され、ヤルディンがやってくるのを待つ。
その間、アンナリーナは昨夜のあのアンデッドを思い出していた。
『見た目はさほど傷んでいなかった。
アンデッドとしての種族はゾンビ?それともグール?
おそらく自我はほとんどなし。
今まで目撃された事もなさそうだし、よくわからない事が多い。
せめて身元だけでもわかればいいのだけど……』
「お待たせしました」
そこに知らせをうけてやってきたヤルディンは、アンナリーナのただならぬ様子に眉をひそめた。
「リーナ殿。
こんなに早く戻って来られたという事は、何かありましたか?」
「ええ、少し困った、と言うか正直どうすればよいか迷っています」
アンナリーナはアイテムバッグから一枚の板のようなものを取り出した。
それは大人の男の掌より大きく、テオドールやセトの掌ほどもある。
「これを見て欲しいのです」
差し出したのは【スマホ】である。
完全なるオーバーテクノロジーだが、幸運なことにすべては【魔導具】で片付く。
今その画面は昨夜写した例のアンデッドが写し出されていた。
「こ、これはっ!
いや、この絵は?!」
ヤルディンは取り乱し、話が進まない。
アンナリーナは側に用意されていた紅茶を淹れ、未だスマホに見入ったままのヤルディンに勧めた。
「その魔導具に関しては後ほどにして、写っている “ モノ ”を見ていただけませんか?」
「むっ? ああ、これは……っ」
ヤルディンの顔色が見る見る間に青く変わっていく。
そして眉間に深い皺が寄った。
「リーナ殿、この絵は一体何なんだ?」
それは “ 絵 ”とは言い難いものだった。
まるで見たところをそのまま切り取ったような画面には1人の男が虚ろな表情で収まっていた。
ただ、その表情に対してまるで空を引っ掻くように持ち上げられた手が怖気を誘う。
「それは魔導具で、その場の景色を切り取ったものです。
……実は昨夜野営中に現れたアンデッド、それがこれです。
このアンデッドに見覚えはありませんか?」
「ケフィン……」
それは3ヶ月ほど前行方不明になった冒険者の名だった。




