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294『オークションの弊害』

オークションが終わったからとはいえ、厄介ごとがないわけではない。

アンナリーナは学院で王族に絡まれ、正体不明の監視者に追いかけ回されていた。


「王子殿下はともかく、後の方は完全にオークション絡みだと思うのだけど」


うんざり、といった様子で振り返ると、つかつかとその【監視者】の元に向かった。


「何か、ご用かしら?」


面と向かって話しかけられて【監視者】は驚愕した。

彼はこの学院では珍しい平民出身で、学業の傍らいくつものバイトを掛け持ちしていた。

そんな彼が最近打診され、喜んで受託したのがこのバイト……学院でも、ある意味有名なアンナリーナを監視し、先日のオークションとの繋がりを探る事だ。

そんな彼は今、その監視対象から話しかけられている。


「いえ、あの、その……ごめんなさい」


コメツキバッタのように最敬礼を繰り返す彼は、恐怖に打ち震えていた。


「こんなに怯えさせて、リーナ、おまえ一体何ものなんよ?」


今日は護衛についているテオドールの、呆れたような物言いに、アンナリーナは唇を尖らせた。


「そんな事言ったって……

ねぇ、あなた、どういう事情なのかわからないけど、話してもらえないかしら」


その言葉に隠された無言の圧力に負けた彼は、涙目で話し始めた。


「バイトなんです!

僕、あなたとウェンライトの関係を結びつける証拠を掴んでくるように言われたんです!!」


そうして、優しく?聞き出した結果、エッケハルトから渡されていた顧客一覧の、注意すべき顧客リストの中に名前のある貴族が浮かび上がった。


「わかったわ。

私が直接接触するから、あなたはそう報告してらっしゃい。

ちゃんとバイト代はもらうのよ」


ぺこぺこと会釈しながら、アンナリーナたちの前から去っていく彼を見送って、テオドールの耳許で囁いた。


「もうふたりほどいるけど……

依頼人は別みたいね。

はぁ、エッケハルトさんから聞いてはいたけど、思ったより面倒だね」


もう、いっそダンジョンに籠もろうか、とアンナリーナが言うとテオドールが嗤った。

侍るように付き従っているネロがここで初めて口を開いた。


「リーナ様、今回のダンジョン行は長期にわたり腰を据えたものになりそうですね。

それなりの準備が必要でしょう。

先に【家】に戻り支度して参ります」


小さく会釈してネロが部屋に戻っていく。

そしてアンナリーナは、事務室に休学届を出しにいくことにする。



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