273『ダンジョンからの帰還』
今回、アンナリーナはダンジョンに丸10日潜っていた。
到達階層は100階層。
実は8日目には到着していたのだが、3日間、ある魔獣を、リポップを待ってまで狩っていたのだ。
そしてようやく、転移石を使って戻ってきたのは冒険者ギルドの帰還陣であり、その姿を見たギルド職員から歓声が上がった。
実はアンナリーナたちはあまりにも長い間帰って来ないので、その生存は絶望視されていたのだ。
これは同行していた冒険者パーティーが、ダンジョンに潜った翌朝には早々に帰還していたのも、その状況に拍車をかけていた。
「ただいま戻りました……っと?
皆さん、どうかなさったのですか?」
いつものようにマイペースでダンジョン攻略をしていたアンナリーナは、今回もテオドールに『一度戻った方が良い』と諭されて初めて帰還する気になったのだ。
それがなければもっともっと潜っていたい……この報告が終わったらまた潜るつもりでいるアンナリーナである。
「ようやく戻ったか。心配したぞ」
駆けつけてきたネイサンが、アンナリーナの顔を見て、ホッとした表情を浮かべた。
「あー、さほど緊迫した状況にはなかったのですが、つい夢中になっちゃって」
アンナリーナはバツが悪そうだ。
「まったく……寿命が縮まるかと思ったぞ。だが無事で良かった」
そう言われても、通常運転だったアンナリーナにはピンと来ない。とりあえず、笑みを浮かべてごまかしておいた。
「では、疲れているだろうが報告を聞きたい」
会議室へ誘導されていくアンナリーナ一行は、ギルドに集まってきた人々の数に目を丸くする。
「君たちと同行した冒険者パーティーが、這々の体で戻って来たのが2日目だった。
だから正直、君たちは」
「弱っわ」
初日は、アンナリーナたちが結果的に露払いの役割を果たしているため、リポップするまでに追いかけて来れていたらほとんど魔獣と接触せずに進めた筈だ。
「結局、何階層まで行けたのかしら」
「50階層と聞いている」
大した事のない階層だ。
少なくてもアンナリーナにとっては通過点でしかない。
「私たちは今回100階層まで行ってきました。
これが証拠になりますか?」
アンナリーナが差し出したのは、この【迷宮都市】でギルドカードを兼ねるダンジョンカードだ。
ここには到達階層や、魔獣討伐数が掲示される。
ネイサンはそこに記された階層と、そのべらぼうな数の討伐数に目を剥いた。
「リーナ殿、これは」
「私は広範囲殲滅魔法を使うので。
モンスターハウスもありましたし、このくらいにはなりますよ。
それと……この町でオークションは開催されますか?」
「オークション?
それなら王都の方がより良い結果を得るだろう」
「王都ですか……
そうですね。あちらに戻ってから出品することにします」
アンナリーナが花が咲いたような笑みを浮かべた。
「一応、何を出品するか聞いても?」
「ドラゴンです」
「ドラゴン?! ドラゴンがいたのか!」
ネイサンが思わず立ち上がった。
今までこのダンジョンにドラゴンが出現するなど聞いた事もない。
「ええ、100階層に」
ダンジョンに関するレポートを書き直す必要があるようだ。




