271『氾濫』
新しくリポップした88階層の魔獣を、再び、いや三度全滅させて回収する。
回収班のアンデッドたちは勤勉で、あらかじめ渡されていたバッグ型アイテムボックスに収納していく。
あの、姿を見えなくする能力を持つカメレオン擬きは【インビジブル・リザード】と呼ぶ事にして、これからも同じような魔獣に注意する事になった。
「私はこれから探索に集中するわ。
常時結界は展開しているけど、セトやネロもお願い」
ちなみに、アンナリーナの傍らに侍るアラーニェは、アンナリーナだけに結界を重ねている。
ここからは防御に力を入れて、新しい階層に降りた時点で探査し、階層全体を【真空】で屠る事にした。
こうすれば直接魔獣と触れ合う事なく処理して進むことが出来る。
純粋な戦闘職であるテオドールなどは多少思う所もあるが、アンナリーナのあの姿を見てしまうと文句はない。
そして西風の精霊王は眷属を引き連れ、存分にその力を奮ったのだ。
「今回は単純に魔獣の殲滅が目的で、薬草などの素材はもったいないけど諦めるしかないわね」
アンナリーナたちの第一の目的は、ダンジョンからの氾濫を抑える事。
このダンジョンに発生した珍しい薬草など採取している暇はなかったのだが。
「マスター、我が眷属たちがマスターに献上したいと、ダンジョン産の素材を色々……採ってきたのだ」
キラキラと輝く、小さな精霊たちがそれぞれ籠を持って集まってくる。
アンナリーナやセト、ネロたちから魔力を与えられ【真空】を発生させている精霊以外の、比較的力の弱いものたちがそこかしこで集めてくれていたのだろう。
これにはアンナリーナも大喜びだ。
「マジ!?
ありがとう! とても嬉しい!!」
アンナリーナの、このブエルネギア特有の素材を見分ける能力は、未だ心許ない。
一々鑑定しながらの採取は時間がかかるのだが、精霊たちは息をするような感覚で薬草などを集めてきてくれた。
「どうもありがとう」
89階層に至る階段の踊り場にて、アンナリーナは献上された素材を確かめながら、インベントリに収納していく。そして心からの感謝を述べた。
89階層。
階段から外を覗き込んだ途端、目に入る魔獣、魔獣、魔獣。
「やっぱり。
ここは【モンスターハウス】化してる!」
ひしめき合う魔獣に、さすがのテオドールも怯んでいる。
アンナリーナにとっては今更だが、初見のものはビビるだろう。
「まずは、広範囲【真空】で隙間を作るわ。
熊さんもそろそろ暴れたいだろうから、ある程度間引けたら前に出て!
回収班はその後、残党が残ってないか確認してからお願い!
さあ、行くわよ」
アンナリーナの膨大な魔力を取り込んだ西風の精霊王イェルハルドが、特大の【真空】をぶちかます。
その側ではセトやネロも【真空】を使い、魔獣を押し返していった。
バタバタと倒れていく魔獣……今は主にヒト型のオーガやトロールだが、その屍を乗り越えてテオドールとイジ、ツァーリが飛び出していく。
「よーし、思いっきり暴れるぞ!!」
最近欲求不満気味のテオドールはここで発散するべしと、戦斧を振り回し暴れ回る。
もう、どちらが魔獣かわからないほど、テオドールは荒ぶっていた。




