265『副ギルド長からの指名依頼』
案外付き合いの良いネイサン氏は、アンナリーナに座るように言うと先に自分が腰を下ろした。
「どうやって僅か半日あまりであそこまで行ったのか……まあ、詳しくは聞かないが」
冒険者の攻略の為の手段は秘匿されるべきものである。
ネイサンも無理に聞き出そうとは思わなかったのだが。
「【飛行】で、序層はぶっ飛ばしました。
地図があったのは助かりましたね」
なんとも非常識な事である。
「それで報告したい事があるのですが、初めに聞きたいのはここのダンジョンは頻繁に【魔獣部屋】化してるんですか?
……83階層、凄かったんですけど」
「【魔獣部屋】……」
ネイサンは目を見開いている。
「とりあえず、全部やっつけてきましたが」
全部インベントリに収めてきたアンナリーナはホクホクである。
「それなりに買い取ってもらえますか?」
スタンピート云々より、アンナリーナの興味は素材買取に行っている。
「具体的には、どのような?」
「それこそ色々ですよ。
場所があればお見せしますよ」
魔獣の解体場に場所を移したアンナリーナは、なるべく倒した順番に出していった。
そうしていると、獣系のあたりでネイサンの顔が歪む。そしてバジリスクを出したところでネイサンは手を挙げた。
「もういい……十分だ」
80階層付近で何か異常な事が起きているのは確かなようだ。
だがアンナリーナは頓着しない。
どこまでも自己中なアンナリーナだったが、続くネイサンの言葉に片眉をあげた。
「指名依頼を受けてもらいたい」
「……内容は?」
「80階層以降の偵察及び討伐だ。
リーナ嬢の他に何パーティか付けるので、どうか受けてくれないか?」
「私のパーティだけで受ける事は可能ですか?
今日にもこの【迷宮都市】に到着するはずなのですが」
「できれば連れて行って欲しい」
新参者を信用しきれないのだろう。
無理もない事だが、しょうがない。
「足手まといは御免です。
ついてこれない場合は置いて行っても?」
「それは問題ない」
もともと80階層以降には行ったことのない連中だ。
おそらく上層で探査をすることになるだろう。
「なるべく早く出発してもらいたい。
出来れば明日にも」
そんな話をしながら戻ってきた、ギルドのホール。
アンナリーナは隣接された酒場のテーブルに座って時間を潰すことにする。
……そろそろテオドールたちがやってきても良い頃だ。
それに、先ほど出したダンジョンの魔獣も買い取ってくれるそうなので、その買取額が出るまで待っているのだ。
「リーナ」
聞き慣れた声に読んでいた本から顔をあげると、ホッとした顔をしてテオドールが近づいてきた。
「待たせたな……また無茶をやらかしてないか?」
両脇を掴んで持ち上げられたアンナリーナは、子供のように抱きかかえられた。
後ろに続くセトたちは物珍しそうにギルド内を見回している。
そこにネイサンがやって来た。
「あ、仲間が到着したので例の依頼を受けます。
集合は明朝……夜明けくらいですか?」
「リーナ?」
到着してすぐの無茶ぶりである。




