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257『地図』

 このブエルネギア大陸は、前世の南米大陸に似た逆涙型に近い形をしている。

 アンナリーナたちが最初に上陸したのは最南端にある【魔人領】

 そして、今いるのはいくつも国をまたいだ北方に近い地域だった。



「お嬢ちゃん、災難だったなあ。

 ここは【取り残された地】

 気づいているだろうけど、魔法が一切使えない地だ」


「はい、ステータスすら確認できなくて難儀しています」


 そこに、最初に対応してくれた兵士と初老の男性が入室してきた。


「お嬢さん、怪我とかはなかったかい?」


 背の高い男性は腰を下ろし、アンナリーナの顔の高さに合わせて話し始めた。


「はい、どうにか森を抜けて来ました。

 あの、ここはどういうところなんですか?」


 彼らは見た目ヒト族に見える。

 だが、何か違和感もある。


「話し始めると長くなるが……

 私たちはこの地に囚われてしまった一族なのだよ。ずっと昔……古代の文明が滅んでしまった時にな」


 村長と呼ばれる男性が地図を示した。


「ここがお嬢ちゃんが飛ばされた森だ。【暗がりの森】と呼ばれている」


 次はその森を含む大きい楕円を描いてみた。


「大体このあたりが【取り残された地】と呼ばれる、どこの国にも属さない地だ。

 ここには儂らのようなものがいくつかの村と5つの町に別れて住んでいる」


「魔素のあるところに行きたいのですけど」


「お嬢ちゃん【取り残された地】には魔素はない。

 この村から一番近い他国は……」


 地図の、道をなぞって示す指がゆっくりと動いてアンナリーナに教えてくれる。


「この道を先に進むと町が3つ続く。

 その3つ目の町【タナ】から分岐する街道を行くと隣国【サンタンソル】に至る。

 この国境を越えたら魔法が使えるようになるそうだ」


「そうですか、わかりました。

 では、そちらを目指す事にします」


 力強くそう言うアンナリーナだが、大人たちからすればまだ子供にしか見えない少女なのだ。


「とりあえず、宿屋に案内しよう。

 今夜はゆっくり、疲れを癒してくれ」




 アンナリーナは大きな盥の中で身体を清めていた。

 森の中でも同じように行水していたが、開放感が違う。

 なによりも外敵を警戒しなくても良いと言うのは精神的に全然違う。

 洗い流さなくてよい、いい香りの沐浴剤の入った湯でゆっくりと身体を擦る。身についた汚れが取れて行くようで、身が軽くなったように感じた。



 結界石を部屋の四隅に置いて、アンナリーナは久しぶりのベッドに、不自然なほど早く寝付いてしまった。


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