254『魔素のない森 2日目』
魔素が存在しない事で、魔法が使えない事はわかった。
正直言ってかなり痛い。
転移やインベントリが使えないのが致命的だ。
だが “ 魔導具 ”を使えた事が命を繋いだ。
それにアンナリーナは気づいていないが、その並外れた体力値と魔力値に伴って裏ステータスと言うべき【攻撃】や【防御】などもすでに人外の域にあり、おそらく下位竜などは余裕で屠るレベルになっていた。
……なので、本人が恐れるほど危険はないのだ。
アンナリーナが目覚めると、もうすっかり陽が昇っていた。
森の中は陽が差さず薄暗いが、アンナリーナが今居る木の上には日差しが届いている。
「……やっぱり夢じゃないのね」
ありがちな現実逃避から立ち直ったアンナリーナは、ここにとどまっていてもしょうがないので、移動することにする。
「と、言ってもどちらの方向に向かっていけばいいか、わからないのだけど」
アイテムバッグから取り出したパンと、以前に【異世界買物】で買ったコーヒー牛乳で朝食を摂る。
「うん、インデックスが使えないから不便だけど、思い浮かべたものが有れば出てくるから……この際在庫一掃するのもいいかも」
アンナリーナがギフトを得て、この生活を始めて2年余り、当初ツリーハウスにあった本も入っていたが、今は書庫に戻してある。
だが、必要としなかったものはそのままこのアイテムバッグの中だ。
「モロッタイヤ村やエイケナール村で手に入れたものは、このバッグに収納する事が多かったので、結構な品数が残ってると思うんだけど」
わりと大雑把な性格のアンナリーナは、インデックス任せで基本管理していない。
「食べ物はそれなりに入ってると思うんだ」
移動中用に紅茶を淹れて水筒に入れ、アイテムバッグに収納する。
ロールパンにハムを挟み弁当とする。
「夜はちゃんとしたものを食べなきゃダメだね」
この後、テントを片付け、木から降りたアンナリーナはふわりと風を起こした。
「イェルハルド、いる?」
『もちろん、マスター』
「大まかでいいから、どっちの方向に進んだらいいか、わからないかな?」
『具体的には? マスター』
「最適なのは人?の住むところ。
あとは森から出たいわね」
魔素がない場所。
それはこの森だけなのか、それとも……
『この近くには集落はない。
最低、この森から出なければならないようだ……
森から出れば、しばらく行けば道のようなものがあるようだ』
「じゃあ、その方向に向かって出発しようかな」
何日かかるかわからないが、進むしかないようだ。
【飛行】が使えないという事がこれほど不便だとは、しばらく忘れていた。
ギフトを受けた、14才のあの時まで自身の足だけで魔獣の森での採取をしていた。それに戻るだけなのだが、魔法に甘えていたことを反省しながら、アンナリーナは進んだ。
「今日の成果は猪が5匹か」
イェルハルドの力を借りて【風刃】で屠ったので血抜き前だが、そのままアイテムバッグに収納してある。
これは、人里に着いたら売り払っても良いし解体だけ頼んでも良いだろう。
目に付いた薬草(この大陸に来てから得た知識)を採取しながら、アンナリーナは先に進む。




