231『ブエルネギア大陸の冒険者ギルド』
ギルドマスター【フミラシェ】との話はエンドルティーノと重複することが多かった。
そして一番聞きたがったのは、船の遭難の話だ。
「ではリーナ嬢は、その魔獣を直接見ていないのだね?」
「はい、姿は見ていません。
最後は船体が割れて……沈んでいきました」
俯いて哀悼の意を表したアンナリーナを、エルフの菫色の目が見つめている。
「私たち4人は船が沈む前に小船に乗って脱出することが出来ました。
そして……どのくらい海の上にいたのか、私はわからないんです」
フミラシェは無理もないと思った。
見た目よりはいくらか年嵩だろうが、それでもひ弱な少女だ。
おそらく、過酷な漂流生活は彼女の体力も精神力もそぎ取った事だろう。
「それで、上陸してからはどうしていたのかね?」
「はい、初めは森を抜けようとしたのですがすぐに諦めて……
それからは砂浜を歩きながら、時々森に入ったりを繰り返して、そのうち一人欠け、二人欠けて」
アンナリーナの芝居掛かった様子に、すっかり騙されたフミラシェはそこで話を止めさせた。
「よくここまでたどり着けたねえ。
お連れの方々はひょっとしたらひょっとするかもしれないから。
気を落とさずに、私も何でも相談に乗るゆえな」
「はい、ありがとうございます」
この後、アンナリーナは無事自分とセトの登録を終え、現金を得る算段を始める。
「マスター、私この大陸の貨幣は一切持ってないのです。
現金を得る手段を、できれば素材を買い取っていただければ嬉しいのですが」
「珍しい、あちらの大陸の素材だ。
鑑定士を交えて買わせていただこう」
「エンドルティーノさんに、こちらで両替をお願いできると聞いたのですが」
「両替も良いが、私はリーナ嬢の作ったポーションに興味があるのだよ。
よければここで、見せて欲しい」
アンナリーナはウエストポーチからアイテムバッグを取り出し、そこから中級体力ポーションCを2本出した。
「お改めください」
海の向こうからやってきたと言う少女は、底知れぬ力を持つ、末恐ろしい存在だった。
エルフとしてもう1000年以上生きているフミラシェとしても、自らの鑑定能力では彼女の能力を覗き見ることが叶わなかった。
その魔力は底なしと言って良いほど奥深い。
基本、純潔主義のエルフでも、この少女の能力を取り込む事が出来るなら、迷わず契りを交わすだろう。
自分とてあと200若ければ……いや、今からでも決して遅くはない。
そんな目で見られているとは知らずに、アンナリーナは魔力回復ポーションも出してくる大判振る舞いだ。
他にオークキングやクリムゾンバイパーの素材も出して鑑定士を待つ。
すでに鑑定を終えたフミラシェが、熱のこもった目でアンナリーナを見つめていた。




