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227『マチルダとトラサルディ』

 うつらうつらしていたアンナリーナが目を覚ましたのは、マチルダが寝室に入ってきたからだった。


「マチルダさん……」


「リーナ様、大変でしたね。

 さあ、これを飲んで、またお休みになって下さい」


 差し出された盆にのっていたのはガラスのコップ。

 すぐにアンナリーナは、その中身に気づいた。


「蜂蜜レモン水……」


「しばらくまともな食事を摂っておられないと聞きました。

 召しあがれるようなら、お粥をお持ちしますが……どうなさいます?」


「ありがとう。

 では、いただくわ」


 ドアの外で気配がする。

 さほど待たずにアンソニーが現れて、上体を起こしたアンナリーナの前に、前世の映画で見た、ベッドの上で朝食を摂るためのミニテーブルが置かれた。

 そこには白地にピンクのウサギの柄の1人用の土鍋と、揃いのとんすい、そしてレンゲが置かれていた。

 アンソニーが恭しく蓋を取ると白い湯気が上がり、中から黄色い柔らかそうな食べ物が姿を現した。


「わあ!」


「玉子のおじやでございます。

 熱いので気をつけて召し上がって下さい」


 鰹だしと薄口醤油と塩の味つけ。

 ご飯は一度炊飯したものを使った。

 あと【異世界買物】で購入したブランド玉子。

 アンナリーナの目の前でマチルダが取り分けてくれる。

 それにふうふうと息を吹きかけて、スプーンで少しだけすくって口にした。


「美味しい」


 優しい味の玉子おじや。

 それをアンナリーナはすばらしい食欲を発揮して平らげていく。


「食欲があって本当にようございました」


 アンソニーとマチルダが嬉しそうだ。




「今日はぜひ聞いていただきたい事柄があって参りました」


 今アンナリーナの前に跪いているのは、スケルトンのトラサルディだ。


「はい、何でしょう?」


「まずはご報告を。

 先日、テオドール殿とイジ殿から、ポーション販売の引き継ぎを受けました。

 つつがなく取り引きを終えたのですが……リーナ様、これまではずいぶんとどんぶり勘定だったのですね。

 ちゃんとした帳簿が見当たらないのですが、今までどうなさっていたのでしょうか?」


 トラサルディは生前、商家の店主だった。

 その彼にしたらここの経営は耐えられないものだったのだろう。


「リーナ様、この部門をすべて任せていただけませんでしょうか?」


 骸骨のオーラが燃えている。

 どうやらトラサルディの商人魂に火をつけてしまったようだ。


「う、うん、構わないよ。

 いえ、よろしくお願いします」


 眼窩だけの目にじろりと睨まれて、アンナリーナは飛び上がった。

 ポーション類の販売は、最初はボランティアのようなつもりで始めたのだが、アンナリーナの作るポーションも薬も評判が良くて、特にポーションはその高い効果に、ギルドなどでは入荷すると取り合いになると言う。


「もう少し販路を広げようと考えています。リーナ様、こんな状態ではもったいないですよ」


 そう言って差し出したのは、アンナリーナが今販売している商品の一覧表。

 すでにそこには注文数が書き込まれている。


「ひゃい、お任せします」


「リーナ様、出来ますれば次のお出かけの前に、こちらの商品の補充をよろしくお願いします」


 骸骨の、本来ないはずの表情が怖い。

 アンナリーナはコクコク頷きながら、このスケルトンには絶対に逆らわないで居ようと、強く思ったのだ。


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