210『砂漠の竜と航海とアイテムボックス』
「ようやく出たわね」
7日で25階層まで到達し、今日26階層までやってきた。
ここまでずっと砂漠と岩石地帯が続いたダンジョンは、今日この一帯のボスともいうべき魔獣をアンナリーナたちの目の前に晒した。
「サンドドラゴン……」
そして、そのお供に現れたのは地竜と土竜だ。
ちなみにサンドドラゴンの姿はオーソドックスなドラゴン型で砂色をしている。そのブレスは砂の中に含まれている石英を溶かした、溶けたガラス状のものを吐く。これにやられると全身が固まってしまい、そのままバリバリと喰われてしまう。
地竜は陸上型の、前世で言う角竜に似ていて、この世界の砂漠地帯では飼い慣らして乗り物として使っている民もいる。
土竜は砂の中に潜り、ひそんで獲物を狙うミミズのような姿をした竜だ。
以前、20階層で悩まされた魔獣はこの土竜の下位種にあたる。
「ドラゴン種は素材的にもおいしいし、ある程度の数も揃えたい。
まずはサファケイトね」
一瞬で真空状態にしてしまうサファケイトは、対象を結界で囲んで使うと絶大な効果を及ぼす。
サンドドラゴンたちは咆哮ひとつあげる事なく砂の上に横たわり、アンナリーナの所有物となった。
それから数日かけて、それなりの数のドラゴンや竜種を手に入れたアンナリーナは、この26階層に転移点を置き、ダンジョンを離れる事にした。
そして久々のアシードの町。
ギルドにダンジョン攻略の進捗を報告し、宿に入る。
今回は一緒に船に乗るテオドール、セト、イジと泊まることになる。
翌日、港に向かったアンナリーナは、大陸行きの船の乗船が1ヶ月ほど前倒しになる、と言う話を聞いて真っ青になる。
「では、出港は……?」
「もう港に、船は停泊しているので、7日後を予定しています。
航海は約3ヶ月で、5日後から乗船していただいて構いません」
そして一冊の冊子を渡され、軽く説明を受けた。
中でも出港前に大切な事は主に食事の事だ。
航海中、食事は個々の責任であり、基本船では提供されない。
このクラスの航海に出発できる乗客はかなりの資産家が多いため、各自アイテムボックスの所持は常識である。
皆、アイテムボックスに航海の間の食事を用意するのだ。
アンナリーナの場合は魔獣の肉はかなりのストックがある、強いて言えば野菜や果物なのだが、これはアシードの市場で買い足せば良いだろう。
何しろアンナリーナには【異世界買物】がある。
最終的にはこれで何でも手に入るのだ。
乗船日初日、僅かな荷物と共に乗船したアンナリーナたちの部屋は所謂スイートと呼ばれる、リビングと主寝室、それにツインの寝室に簡易キッチン、バストイレ付きの部屋だった。
キッチンは魔導コンロが設えられていて、さほど手の込んだものでなければ料理が出来るようになっている。
アンナリーナたちはすぐにテントを張ってツリーハウスへの扉を設置したため、それほど重要ではないが、他の乗客にとっては大事なことなのだろう。
「まあ、3ヶ月も生活するわけだから、それなりに暮らしやすくしましょうか」
もうアシードの町に用のないアンナリーナたちは、今日からこの船に腰を据える事にする。




