203『難癖をつけてくる奴ら』
【ジャスティスハート】絡みのあれやこれやは、アンナリーナ自身が強制的に休息を取らされたため、詳しい事はわからない。
ただテオドールから、ダンジョンから出てきた連中はもれなく、待機していた幌馬車に押し込まれ、アシードの街に搬送されて行ったそうだ。
結果的にアンナリーナは3日間、熱を出して寝込み、1日を様子見としてようやく当初の計画通り、この騎士のダンジョン(仮)の攻略を始められることになった。
期間は約2ヶ月。
船の出航まで、まだ間があるがこのくらいが潮時だろう。
「では、私たちは長期間このダンジョンに潜りますので、よろしく」
入り口の兵士に、そのあたりもちゃんと断っておく。
これでゆっくり探索する事ができる。
そんな遣り取りをしていたところに、何やら見覚えのある男たちが数人近づいてきた。
初めはダンジョンが目的かと思ったが、それにしては軽装備過ぎる。
「おい、おまえら!」
ダンジョンに入ろうとしているアンナリーナたちに向かって駆けてくる男たちは全部で4人。
その彼らはアンナリーナに向かって、凄い剣幕でまくし立ててくる。
「え……っと、どちらさま?」
彼らはアンナリーナが対応した事で見誤っていた。
彼女の隣にはテオドールも、セトやイジもいることを。
「今日は提案があってやってきた」
4人の中で、まだ比較的冷静な男が話し始めた。
「我々は、先日のダンジョンからの撤退の際に入手した、魔獣の素材の返還を要求する」
ここでようやくアンナリーナは、この目の前の4人が、先日サルベージしてきた【ジャスティスハート】のメンバーだと気付いた。
「……返還って、あなたたちは何もしてないでしょう?
ただ、一緒に走っていただけじゃん」
「なっ、それでも我々には要求する権利がある!」
どのような権利だと言うのか。
この件はダンジョンから出るとき、エンゲルブレクトと話し合い済みだ。
アンナリーナは今回の依頼の報酬を、途中で狩った魔獣をすべて移譲される事で相殺した。
彼らはその取り決めを知らないと言うのだろうか。
とんだ言い掛かりである。
アンナリーナはうんざりして、溜息する。
ここで始めて、テオドールが口を開いた。
「あの後、正式に契約の書面を交わした。
俺が立会い、双方が契約書の控えを持っているはずだが、それでも納得いかないと?」
「あたりまえだ!
俺たちは犠牲者も出したのに、碌な素材も持ち帰れなかったんだぞ」
それはあちらの言い分であって、アンナリーナ側がどうこう言われる筋合いではない。
「もう、この話は終わっているはず。
退いて下さらない?私たちは前回邪魔された攻略に、改めて潜行するのだから」
アンナリーナは、火に油を注ぎにかかる。
そして男たちはついに得物に手をかけた。
「!!」
瞬間、アンナリーナの身体から魔力が溢れ、男たちを威圧する。
おそらく今まで、これほどの魔力に曝された事がないのだろう。
得物を取り落とし、四つん這いになって俯く顔からは脂汗が止まらない。
「あなたたちを捜索して連れ帰ったことにより発生した、正当な報酬を渡せと言うの?
私はこの事を、どう捉えればいいのかしら」
普段温厚なアンナリーナの、憤怒の表情が恐ろしい。
「剣を抜いたわね?
皆、見ていたわよね。
正当防衛で、グシャってやってもいいわね?」
「お待ち下さい!」
汗びっしょりの人馬が現れて、あたりが突然騒がしくなる。
そして転げるように馬から降りてきたのは、今頃はアシードにいるはずのエンゲルブレクトだった。




