201『激走』
テントから姿を現したアンナリーナが連れていたのは、エンゲルブレクトたちから見るとあり得ない面子だった。
まずは【ジェリーフィッシュ】
ふわふわと漂うジェリーフィッシュはエンゲルブレクトが見たことのある個体と比べると、かなりの大きさだった。
ただ、あまり人の目に触れない魔獣だからだろう、ジャスティスハートの連中は珍しいものを見る目でいる。
次にテントの入り口の布を退けて出てきた姿を見て、驚愕のあまり失禁したものもいる。
巨大な戦斧を持って現れたのは【ミノタウロス】だ。
それも見るからに上位種である。
次は見るからに不気味な漆黒のローブで身を包み、フードを深く被り、おどろおどろしい面を着けている。
【エルダーリッチ】に進化したネロは5体のスケルトンジェネラルを従えていた。
「彼らは私の従魔です。
このメンバーで皆さんを囲んで護衛していきます。
それなりの速度で駆けるので、遅れないようについて来て下さい」
再びセトに抱き上げられたアンナリーナは先頭で索敵するイジの後ろのポジションにいる。
その後ろにエンゲルブレクトが付き、その後にジャスティスハートの連中が続く。その彼らを囲むように、テオドール、ツァーリ、ネロとその僕たちがいて、アマルは上から監視していた。
「1階層でも上に行けば、それだけ危険は減ります。
皆さん、頑張って走って下さい」
アンナリーナの号令で、一行は走り出した。
「はい、今日はここまでにします。
皆さん、お疲れ様」
ようやく、アンナリーナたちが足を止めたのは第8階層の階段の下り口だ。
ここは踊り場に続く場所が拓けていて、結界さえ張れば多人数の居場所を確保できる。
そしてようやく、一息ついた冒険者たちは、疲労ゆえ身を横たえるものもいた。
アンソニーの手によって運ばれて来た大鍋は3つ。
中にはたっぷりのスープが入っている。
アマルが触手を器用に使って、黒パンの入った籠や、チーズの並べられた皿を持ってくる。
何しろ20人近くの人間がいるのだ。
配膳を待つ列では、小さな諍いも起きているようだ。
「しかし美味いですな。それに腹も膨れる」
今夜の食事はスープパスタだ。
豆や、ハムや野菜をサイコロ切りしたものを炒めて、スープストックを足して煮込む。
塩味をつけてショートパスタを入れ、少し煮込めば、簡単スープパスタの出来上がりだ。
付け合わせの煮玉子やチーズなどもたっぷりと出されて、12階層から救い出された男たちは、久々のまともな食事に舌鼓を打った。
中には何杯もおかわりするものもいて、腹が膨れたものたちは思い思いの場所で眠りについた。
「エンゲルブレクトさん。
……伺っていた人数から、4人足りませんね」
多くのものが眠りにつき、ようやくアンナリーナはこの話題に触れた。
「ああ、やはり全員無事というわけにはいかなかったが、それでもこうして連れ帰ることが出来て良かった」
ここにいないものの最期を聞き知っているのだろう。
沈鬱な表情で俯いたエンゲルブレクト。
アンナリーナは無言で、その場から離れた。




