197『ダンジョン突入!』
ダンジョンの入り口で、兵士にギルドカードを差し出す。
とんぼ返りと言う状況になったが、アンナリーナたちは万全の準備をしていた。
だが、たったひとつ万全でないものがある。
それはアンナリーナ本人であり、従魔たちの、尚且つテオドールの心配の素だった。
「主人は、俺が抱いていく」
これだけは決して譲らない、とセトが言い張り、アンナリーナは渋々折れた。
テオドールも不満げだったが、自分は元々魔導士なので両手が使えなくても問題ないが、テオドールは両手がふさがってしまうと戦斧を使えないだろう、と言われ納得するしかない。
アンナリーナはセトに縦抱きされ、今に至る。
「これから3階層まで一気に突っ走る。
あんたたち、しっかり付いて来いよ。
遅れたら置いていくからな」
テオドールはエンゲルブレクトたちに辛辣だ。
そして、イジを先頭に、一行は走り出した。
1階層をあっという間に駆け抜け、一行は今、2階層を走っていた。
この2階層も、先頭のイジが威圧することで、魔獣たちは近寄っても来ない。
だが、すでにオーバーペースのエンゲルブレクトたちは付いていくのもやっとだった。
特にエンゲルブレクトの従者の少年が酷い。彼はもう半ば意識を飛ばして走っていた。
「なあエンゲルブレクトさんよ。
あいつはもう限界だ。悪いことは言わない、次の階段で置いていけ」
「そんなことはできない!」
走りながらの会話を、本人は聞く余裕すらなかった。
「勘違いしないでくれ。
今回の依頼はリーナの強い希望で受けることになったが、俺らは今でも納得しちゃいねえ。
今のあいつは体力を極限まで消費していて、いつ倒れてもおかしくないんだ。
……5階層で2日の間、ほとんど眠らずに “ 湧き ”に対処していた。
あいつは元々虚弱なんだ。
だから余計な世話はかけないでくれ」
エンゲルブレクトは絶句した。
冒険者ギルド騎士のダンジョン(仮)出張所で声をかけた時、確かにダンジョンの状況を報告していた。
その後、畳み掛けるようにこちらの都合を押し付けたので、彼女らの状態を図ることもなかった。
“ 湧き ”への対処も詳しく聞こうとしなかった。
「だからそいつは階段に置いていけ。
あそこからなら、体力が戻れば自力で戻れる。
3階層に入ったら途端に強くなるんだぞ」
この後、3階層へと続く階段の踊り場で、ここから戻るように言われた従者の少年は、抵抗することなくホッと胸をなでおろした。
3階層になり、威圧で抑えられなくなった魔獣が向かってくる。
それを一刀両断するのはイジであり、一行は魔核もとらずに失踪した。
「前回も、こんな様子だったのか?」
エンゲルブレクトは、前方で魔獣を始末するオーガ、イジの腕前に感嘆しながら、走り続けている。
「そうだな……
このダンジョンは、何故かこのあたりから急に強くなる。
ゴブリンにしてもオーガにしても最低ジェネラルクラスだろ?
装備だって僅か3階層とは思えないほどだ。だが、これを倒せば素材の他に装備が手に入る。
このダンジョンは上手く運営したら、かなりの冒険者を呼べるぜ」
「なるほど、参考になる」
「まだまだ、5階層以降はこんなもんじゃない」
テオドールはニヤリと笑った。




