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195『【ジャスティスハート】のエンゲルブレクト』

 アンナリーナはギルド出張所で、現物をインベントリから取り出して説明した。

 その話が進んでいくにしたがって、ギルド職員たちの顔色が変わっていった。


「それは……た、大変だ」


 もう、歯の根が合わない状態になったギルド職員は、足がすくんでしまったのか椅子に座り込んでしまった。


「とりあえず “ 湧いた ”のは5階層だけのようです。6階層より深部はわかりませんが」


「それは本当かね?」


 扉を開けて入ってきた男が、アンナリーナたちの話に割り込んできた。

 訝しげな視線を向けたアンナリーナに、彼はていねいにこう説明した。


「申し訳ない。

 私は【ジャスティスハート】に所属するエンゲルブレクトと言う。

 そちらの話を遮って悪かった。

 今の、その “ 湧き ”の話を聞いて、居ても立っても居られなくなってしまって」


 その彼、エンゲルブレクトはかろうじて平静を保っていたが、彼に従っていた3人の冒険者は顔色を真っ青にしている。


 アンナリーナが、ちらりとテオドールを見ると小さく頷き返してくる。

 ギルド職員に報告の終了を告げると、現物を収納してエンゲルブレクトに向き直った。


「場所を移してお話ししませんか?

 こんなところではゆっくりできませんし」


 実はアンナリーナも、相当疲労が溜まっている。一刻も早く座りたい状況なのだ。



 かなりチープなギルド出張所を出ると、冒険者たちが集合できるように広く取られた空き地に、セトとイジがアイテムボックスから取り出したテーブルと椅子を並べていた。

 アンナリーナを日差しから守るために豪奢な日傘も差しかけられた。


「どうぞ、お座りください。

 名乗りが遅れて申し訳ございません。

 私はリーナ、こちらがテオドール、あとは私の従魔のセトとイジです」


「ああ、改めて名乗らせてもらう。

 私はエンゲルブレクト、そして従者兼護衛のビヨルン、コニー、ディーダだ」


 とても護衛など必要ないように見えるエンゲルブレクトだが、体裁もあるのだろう。

 アンナリーナはアイテムバッグから茶器一式と茶葉、ミルクや砂糖も取り出し、ポットとカップに湯を満たし始めた。

 ポットが温まるのを待ち、湯を捨てる。その中に茶葉を入れ、熱湯を注いで2〜3分蒸らしておく。

 その間にクッキーやソフトクッキー、ラングドシャやミニケーキなど甘味やポテトチップスのようなスナック菓子も取り出してテーブルに並べた。

 そしてカップを温めていた湯を捨てて紅茶を注ぎ、エンゲルブレクトたちに勧めた。


「どうぞ……

 お砂糖とミルクはご自由に」


 エンゲルブレクトは、アンナリーナのその見事な所作に驚愕し、後の3人は見るからに高価そうなティーセットをおっかなびっくり手にしている。

 そしてエンゲルブレクトはこの小柄な少女を上流階級出身と判断して、そのように扱う決心をする。


「おもてなし頂き、ありがとう。

 いただきます」


 繊細な絵柄のマイセンのティーカップを手にして、まずは一口。

 紅茶本来の味と香りを楽しみ、エンゲルブレクトはほう、とひと息、満足げに息を吐いた。


「とても美味しいです。

 紅茶を淹れるのがとてもお上手ですね」


「ありがとうございます。

 さ、どうぞお菓子も召し上がって?」


 やはり上流階級出身のエンゲルブレクトは、久しぶりのまったりとした時間に瞬間、現実を忘れていた。


「さて、本来のお話を始めましょうか」


 アンナリーナの言葉に、現実に引き戻された。


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