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189『ダンジョン突入』

 港湾都市アシードは、その立地の特殊さゆえにヒト族以外の亜人たちも多く滞在している。

 本来なら騒がれてもおかしくないセトとイジだったが、意外すぎるほど簡単にダンジョンへの門を通ることが出来た。

 ただ、ダンジョン入り口のゲートでは、セトとイジにギルドタグを目立つ場所に付けるように忠告された。

 これは冒険者に “ 狩られる ”事を恐れてのことだが、この2人を襲撃したものは反対に狩られてしまうだろう。

 なお、その場合のペナルティはない。ダンジョンではすべて自己責任なのだ。



「案外あっさりと入れたものだな」


「できたてほやほやのダンジョンだから、もう少し神経質かと思ったのだけど、自由なのね」


「と、言うか余裕がないんだろう」


 テオドールが戦斧をぐるんと回した。


「だって見ただろう?

 ギルドの出張所はまるで掘っ建て小屋、兵士の詰所は未だテントだ。

 建屋の工事は進んでいるが完成はいつになるかわからない。

 この国では初めてのダンジョンらしいから、すべて手探りで行なってるんだ」


 デラガルサのダンジョンは鉱山の坑道に発生したものなので、そういう面では恵まれていた。

 すでに町として発展していたデラガルサではダンジョン自体の整備をすればそれで良かったのだ。


「ここは……これからだもんなァ」


 ダンジョンに一歩足を踏み入れて周りを見回すと、壁際にポツリポツリと魔導ランプが設えられていて、照明と言えるのはこれだけだ。

 なので冒険者たちは各自灯を用意して足下を照らしていた。


「何かまだ、岩の角なんかも刺々してる。掘り出したて?って感じ」


「出来立てダンジョンなんて滅多に見れるもんじゃない。ラッキーだったな」



 第1層はほとんど魔獣はいない。

 いたとしても小さなネズミのような魔獣や、ゴキブリのような昆虫魔獣だ。

 アンナリーナたちは、それを威圧で蹴散らせていき、あっという間に2階層に降りる階段に続く安全地帯?に着いた。


「よう、リーナたちも早速潜ってきたか」


 馬車を降りたところで別れたヘンリクスたちと再会し、挨拶を交わし合う。

 彼らはここで本格的な装備を身につけているようだ。


「潜るしかないでしょ?

 だって何にもないんだもの」


 雑貨屋すらまだない、必要最低限のものがギルド出張所に用意されているだけだ。なので今、このダンジョンに入るためにはアシードで一切の準備をしなければならない。

 アンナリーナたちのように大容量のアイテムボックスを持つのは、限られた上級冒険者のみなので、ダンジョンの攻略は簡単ではないのだ。


「じゃあ、お先に」


 アンナリーナたちは足早に階段を降りていった。




「ねぇ、熊さん、気づいてる?」


 アンナリーナは、2階層に降りてきてからずっと後をつけてきているものに気づいていた。


「ああ、人か?」


「うん、そうみたい。何だと思う?」


「そうだな……」


 テオドールは何を思ったのか、今まで無視してきた魔獣を狩り始めた。

 ここらあたりの魔獣は魔石も素材も大したことがないので、アンナリーナたちは回収しない。

 そのまま目につく魔獣を数回狩ると、隠れて後方を伺える場所で目を凝らした。

 すると、しばらくして現れた少女が背負い袋にネズミや蝙蝠を入れていく。それを何回も繰り返してアンナリーナたちが残した魔獣を回収していた。


「ハイエナか……」


 テオドールは露骨に顔をしかめた。

 ハイエナとは、自分では魔獣を狩る腕を持たないものが、上級者が残したザコの素材を失敬する行為だ。

 放棄したとはいえ、厳密にいえば泥棒である。

 特にダンジョンでは嫌われる行為だった。


「放っておけば?少し様子を見ましょう」


「そうだな」


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