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185『護送』

 2日後。

 アシードの北門、通称中央門にはアンナリーナの大型馬車の姿があった。

 そして馬車から降りたテオドールが門番の兵士に近づき、言う。


「かねてから農村部で、薬師を騙り詐欺を働いていた4人組を捕縛してきた。

 至急、憲兵隊に連絡をお願いしたい」


 兵士たちもその騙り者たちの噂を聞いてはいたが、辺境を対象としていたため、姿を捉えられず後手後手に回っていた。

 それを捕まえてきたと言う。

 門番の兵たちは慌てて他の馬車を誘導し、アンナリーナたちを最優先で中に通した。


「憲兵隊には連絡しました。

 すぐにやって来ると思うので、しばらくこちらでお待ち下さい」



 報せを受けてやって来たのは、バルトリたちの件で世話になった憲兵隊隊長だった。


「リーナ殿、どうなされた?」


 15名ほどの兵士を従え、馬で駆けて来た隊長は多少息が上がっている。


「隊長さん、わざわざありがとうございます。

 実は、私の国で捕縛対象になっている重罪人を捕まえて参りました。

 できましたら早急に、憲兵隊に場を移したいと思います」


 隊長は誘われるままに馬車に乗り込んだ。

 ここで、隊の本部に着くまで軽く説明が行われる。


「現状、把握できる被害はほとんどこちらのお国で起きていると思われます。ただ、私たちを騙った偽者なので、私たちの本拠地ハルメトリア国として放置出来ないとの事でこの書を預かって参りました」


 まずは、と差し出されたのは一枚の羊皮紙。それは正式な外交文書で、アンナリーナの話を裏付けしている。

 最後のサインは王自らのもので、普段そのようなものを見たことのない隊長は、目を見開き、息を呑んだ。

 そしてもう一枚は王自らの手による、処刑許可書だった。

 今度は驚愕のあまり絶句する。


「幸い、というか、私がこの許可書を使うことはなかったのですが……隊長さんにはお入り用でしょうね」


 これは生かして連れて来た、ということだ。


 その顔色で推し量ったのだろう。

 アンナリーナは、ぐい、と顔を近づけた。


「今回、どのくらい被害が広がっているかわからないですからね。

 とりあえず偽者が “ 営業活動 ”して来た場所を吐いてもらわないと。

 ひょっとするともう、死者が出ているかもしれません」


 その対象になるのは恐らく冒険者だ。

 魔獣との交戦中に、減った己の体力値を補ったり、怪我の手当てに使ったりした時、それがただの水だったら?

 考えるだけで恐ろしい結果を招く、偽者たちが行ったのは、そう言った凶悪犯罪なのだ。



「リーナ殿、言われた通りに隊の馬車留まりにやって来ましたが……」


 アンナリーナの意図することがわからないのだろう。

 隊長も副隊長も、戸惑いを隠せない。

 そこでテオドールが一足先に馬車を降りて、後部に回り込んだ。

 アンナリーナたちも続く。


「まずは馬さんたちを出してあげて。

 余計なものを乗せているから、窮屈だったでしょ?」


 テオドールが開けた扉の中を覗くと、そこは馬小屋になっており、2頭の馬がのんびりと繋がれていた。

 そして、その足元に転がっている異物は……


「ちゃんと結界を張っているので、踏み殺されたりはしてないですよ。

 でもずいぶんと弱っていたから、大丈夫かな?」


 白いロープ状のもので全身をぐるぐる巻きにされて、最早頭しか出ているところはない。

 その状態で4人、端の方に転がっている。


「あっれぇー? 今朝は生きてたけど……こら、死んだふりするな!」


 アンナリーナの竜種のブーツの足先が、まともに顎に入って、ひときわ大きなぐるぐる巻きは悶絶する。

 続けて蹴り飛ばしていくアンナリーナを見て、隊長はもう女性不信になりそうだ。


「うん、生きてる。

 隊長さん、あとはお任せしてよろしいかしら?」


 アンナリーナは、それはそれは朗らかな極上の笑みを浮かべた。


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