表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
419/577

179『焼きそば』

 今まで野営をしてきた場所は、森の中の少し開けた空き地が多かったので、今夜のこの、満天の星空を見る事は無かった。


「ふわぁ、見事だねぇ」


 360度の大パノラマを見渡し、手を伸ばせば届くような星々に、しばし今の状況を忘れた。

 と、香ばしい匂いとジュージューという音がアンナリーナを現実に引き戻す。さらにお腹がクーと鳴って、ようやく意識が向いた。


「リーナ! 焼けたぞ!!

 味見してくれ!」


 テオドールが夜店よろしく、2本のヘラを使って焼きそばを焼いていた。

 その鉄板と並ぶのは色々な肉を焼く鉄板や、野外用バーベキューコンロだ。


「はーい、今行きまーす」


 アンナリーナは現実に戻り、駆け出した。



 ミノタウロスの厚切りステーキ、ホロホロ鳥の串無し焼き鳥、オークのピカタ、目玉の骨つきウィンナーを含むウィンナーやチョリソーが、美味しそうな焦げ目をつけて焼かれている。

 そして今夜の主食は焼きそばだ。

 オーソドックスな、キャベツと玉ねぎ、にんじんに薄切りハムとともに炒められた麺は【異世界買物】で買った、アンナリーナにとっては懐かしい、黄色い麺だ。

 焼きそばソースは某お好みソースの姉妹品で、前世でアンナリーナが愛用していたものだ。もちろん鰹節も忘れない。


「みなさーん、お肉も焼きそばも出来上がりましたー!

 順番に並んで下さいー!」


 アンナリーナの声に、男たちが敏感に反応する。

 各自、皿を持って思い思いのところに並んで肉を給餌してもらっている。

 早速ステーキに齧りついたダンが言葉にならない嬉声を上げていた。



「焼きそば、最高ー!」


 キャベツも玉ねぎも収穫すぐにインベントリに保存してあるため、特に玉ねぎは甘くて美味しい。

 キャベツも火が通っていて、それでいてシャキシャキ感が残る絶妙な焼き加減だ。

 麺は一度湯をかけてほぐし、完全に水分を切らずに蒸し焼きにした。

 本来はそのまま食べるのだが、アンナリーナはそこに、お好み焼きに入れるイカ天を砕いたものを振りかけ、その上にお好みソースとマヨネーズを足して舌鼓を打つ。

 完全にカロリーオーバーだが、今世のこの身体は太りにくいようだ。

 おそらく魔力が関わっているのだろう。


「みなさーん、じゃんじゃん食べて下さいねー」


 今夜は、明日からの士気を高めるためビールを飲むことが許されている。

 もちろん常識の範囲内だが、彼らが大に盛り上がったのは言うまでもない。




 その夜の見張りは従魔たちが行う事になっていて、一行が眠りについた頃にアンナリーナは結界を強めて眠りについた。


「リーナ?」


 ツリーハウスの自室で、入浴をすませたアンナリーナがぐったりしている。


「リーナ、どうした?」


 就寝しようと、アンナリーナを抱き上げたテオドールの眉尻が上がる。


「熱いな……これは風呂のせいじゃないだろう? いつものやつか?」


 ナビからの報せで駆けつけてきたアラーニェが、作り置きされていた丸薬を用意する。

 アンナリーナのこの症状は病気ではないため、薬で熱を下げるのではなく、熱を逃がす方向にもっていく。


「お熱はそれほど高くないようですね。お頭を少し冷やしましょうか」


 濡れたタオルで額を冷やし、上掛けをかける。テオドールに冷たい眼差しを向けた後、一度部屋を出ていった。


「俺は今夜はソファーで寝るから、おまえもちゃんと休むんだぞ」


 大きくて無骨な手が頬に触れて、そして口づけが降りてくる。

 アンナリーナの唇を優しく食むように動いた唇が離れる前に、アラーニェの咳きが聞こえてきた。


「テオドール殿? お控えください」


 相変わらず、アンナリーナ至上主義のアラーニェは、テオドールには辛辣だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ