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178『間の時』

 各地に点在している村々のすべてが、街道沿いにあるわけではない。

 むしろ街道から外れた、あまり余所者が近づかないような場所にある村が多く、それが今回狙われた。

 素朴な村人は、薬師と聞いて村全体で歓迎し、言われるままに購入した回復薬が偽物だったとは泣くに泣けない。

 調査の結果、ある村では偽薬を服用して、手遅れになってしまったケースもあったそうだ。


 アンナリーナはそれを聞いて怒り狂った。

 この世界、命に直結する薬師や治癒師を偽る事は重大な犯罪である。

 今回は効果の低い薬や偽ポーション、偽薬まで売っているので極刑は免れないだろう。


「とにかくこの件は皆さんをアシードまで送り届けてから動く事にします」



 酒場の後、憲兵隊に寄って詳しい話を聞いたアンナリーナたちは、反対に尋問に近い待遇を受け、この夜疲労困憊で宿に戻る事になった。



「それは……街道沿いでは動きはなさそうですね」


 バルトリが、今回の詳しい話を聞いて眉をひそめる。


「この件は根が深い。

 捜査次第ではまだまだ被害が広がるかもしれないな」


 その予想通り、この件は裾野を広げ、問題を大きくしていく事になる。




 今夜を最後に、原則次の町まで飲酒は禁止となる。

 男たちは浴びるほど酒を飲み、羽目を外していた。

 アンナリーナはその場をそっと離れて部屋に戻ると、テントで繋いだツリーハウスに戻っていた。



「リーナ様」


 顔色の良くないアンナリーナにアラーニェが話しかけた。

 他の従魔たちも心配そうに集まっている。


「悪いけど明日から皆に無理言うかもしれないけど、お願いね」


 セトとイジ、そしてアラーニェとアンソニーはすでに行動を共にしているが、他の従魔たちは姿を晒していない。

 明日からは野営をするつもりなので、見張りは完全に彼らに任せるつもりだ。


「どちらにしても、一度くらいは襲撃を受けるかもね。

 返り討ちにしてやるけど」


 エドワルド王が、現代日本を意識して、中途半端に改革したこの国は、歪な構造になっているようだ。

 村全体、もしくは村の主だった人物が盗賊団を率いているなど、その最たるものだろう。


「そんなに貧しいようには見えないんだけどなぁ」


 寒村に行けば違うのかもしれないが、犯罪に手を染めなくでも十分暮らしていけるように見える。

 アンナリーナは、自分が生まれ育った村やハルメトリアとくらべて、この世界を憂いた。




 見通しの良い草原の中に街道が走っている。

 このあたりは草原地帯が続くので、比較的走りやすい地域だ。

 そんななか、アンナリーナが召喚したエピオルスに乗り、護衛の冒険者たちが馬車に並走している。

 これは、そろそろ閉じ込められる事に耐えられなくなりつつある彼らのために、アンナリーナが配慮した結果だ。

 今は結界を張らずに、アンナリーナと馬車の上空を飛ぶアマルの探査能力で防衛していた。


「今夜は屋外で食事しましょうか」


 馬車の居間で書類を広げていたバルトリに話しかけるでもなく呟いた。


「外で?」


 バルトリは未だに恐怖感が拭えない。

 それはあの襲撃からの死の予感。

 商人という仕事柄、いつかは克服しなければならない恐怖なのだが、戦闘職ではない一般人の彼には荷の重い事だった。


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