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160『学研都市、再び』

「戻ってきちゃったよ……」


 馬車をしまい、エピオルスに跨ったアンナリーナたちは、憲兵隊の馬車に乗ったバルトリたちと学研都市アルファ・ケンタウリに入る門の所で佇んでいた。


「まあ、諦めるしかないな」


「あの大学院の学院長とは、もう関わり合いになりたくないんだけど。

 嫌な予感がビシビシする」


 エピオルスの手綱を引いて、アンナリーナは後ろに下がろうとする。


「もう、行っちゃっていいかな?

 私たちは通りかかっただけだからいいよね?」


 これは、アンナリーナの独り言だったのだが、耳ざとく聞いていた憲兵隊のひとりが近寄ってきて、エピオルスの手綱を掴んだ。


「申し訳ないが、もう少しお付き合い願いたい」


 無駄ににっこりと笑って、退路を塞ぐ兵士に、アンナリーナは溜息をつく。

 そしてエピオルスから降りて召喚を解いた。


「私たち、元々王都に向かっていたんですよ。突然の乗り合い馬車運行停止で凄く迷惑してるんです。

 しょうがないから先に南部に行こうとしたら、この度の一件で。

 事情聴取ですか? 早く済ませてもらえませんかね」


 ほぼ、逆ギレ直前である。

 全身から威圧する魔力が漏れ出し、慌ててテオドールが間に入った。


「リーナ、おまえは疲れているんだ。

 今夜はゆっくりしよう、な?」


「うん、熊さん。

 いっぱい、ゆっくりしたい」



 形通りの調書が取られ、この時は一度解放された。

 アンナリーナたちは門に駐留している兵長に許可を取り、門の外の広場で馬車を出す事にした。


「もう今日はゆっくりとお風呂に入って、美味しいものが食べたい」


 フラフラと馬車に向かい、結界を張ったあと、アンナリーナはツリーハウスに戻り、自室に籠った。

 夕食は、きのこのクリームソースがけオムライスである。

 中のバターライスが絶品で、アンナリーナは思わずお代わりをしてしまった。

 サラダはトマトとチーズを重ねて、オリーブオイルをかけたもの。

 それと、茹でた白アスパラガスにバターソースをかけたものだ。

 ビールと、オークのスペアリブのオーブン焼きを楽しんでいるテオドールと2人で、静かな夕餉を楽しみひと息つく。


「もう、このまま解放してくれないかな」


「無理だろうな。

 明日はあの連中の証言と擦り合わせをするんだろう」


 げんなりしながら眠りについたアンナリーナは、翌朝熱を出し寝込むことになる。




 今、バルトリが代表で憲兵隊隊長と対峙している。

 そして相手の発した言葉に理解がついていかない。


「申し訳ございませんが、もう一度お願いします」


「我々はあらゆる可能性について熟考している。

 この件に関して、あの少女たちはいささか怪しくはないかね?

 むしろ、あなたたちを襲って救援する……自作自演だったのではないか?」


「なんて事をおっしゃるのです。

 あの方たちは誠心誠意、私たちを助けて下さった。

 そんなことはあり得ない」


 バルトリは商人である。

 商人であるからこそ、アンナリーナが使ったポーションの価値がどれほどのものか、よくわかっているつもりだ。

 5人の治療費はあちらの言い値を支払ってきたが、それは相場からずいぶんと値引きされていたことに感謝したものだ。


「では、治療の押し売りでは?」


「それもあり得ません」


 隊長は苛立っているように見えた。

 短い期間に2つの事件。

 それも、双方とも盗賊の襲撃だ。

 早期に解決しないと、乗り合い馬車の運行にも関わってくる。

 彼はこのアルファ・ケンタウリの領主からプレッシャーをかけられていた。

 それは、例え無実のものを犯人に仕立て上げたくなるほども、強いものだった。


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