表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
398/577

158『悲しみのなか』

「この襲撃の一報を届けるため、すでに私の仲間がアルファ・ケンタウリに向かっています。

 そろそろ着く頃だと思いますが、ここに到着するまでには多少時間がかかるかと」


「何から何まで申し訳ない」


 バルトリが頭を下げた。

 憔悴した顔が気の毒だが、この後さらに追い討ちをかけることになるだろう。


「あの……皆さん、長い間何も召し上がってないでしょう?

 胃に優しいスープを用意していますのでいかがですか?」


 本当は失った血を増やすために、がっつり肉を食べてもらいたいところだが、彼らには仲間の遺体の確認という辛い仕事が待ち受けているのだ。

 冒険者などはそれほど繊細だとは思わないが、今回の襲撃は彼らの精神に深い傷を残しているかもしれない。

 何よりも、近接戦闘が一切なしでズタズタにされたのだ。


「アルファ・ケンタウリから憲兵さんたちが到着するのは、早くても明日になるでしょう」


 そこにアラーニェがスープ鍋と食器類、それに柔らかな白パンを持ってテントに入ってきた。

 絶世の美女とも言うべきアラーニェを見て、男たちが魂を飛ばしている。


「えーっと、アラーニェは私の従魔です。本性はアラクネ……口説かない方がいいですよ?」


 ニィと笑んだ、その口許には鋭い牙が覗いている。

 途端に男たちがシュンと項垂れてしまう。


「まあ、まず食べて下さい」


 重苦しい空気の中、食事が始まった。




 男たちが、今までいたテントを出て、また違うテントに案内された。

 ……そこには、セトたちが捜索して回収した遺体が15体並んでいる。

 一応、生き残った彼らに遺体の確認をするか尋ねたのだが、全員が希望したのでこの場に連れてきたのだ。


 セトたちにザッと清められた遺体は、前世の死体袋のように縫われた布に包まれ並んでいる。

 合わせを開くと顔が確認できるようになっていて、5人は順番に検めていった。


 テントの中に嗚咽が広がっていく。

 アンナリーナはそっとテントから出て、外で待つことにした。


「主人、こちらはすべて終わりました」


 セトたちには遺体の回収をしながら、瓦礫とその他の物品……例えば冒険者たちの持ち物や武器、強奪されなかった商品などを一か所に集めさせていたのだ。


「ありがとう。

 あの人たちが落ち着いたら、そっちの方も見てもらうね。

 ……今日中に出来ればいいのだけど」


 アンナリーナの危惧は良い意味で外れ、一刻ほど仲間たちとの別れを惜しんだのち、5人は揃ってテントから出てきた。


「リーナさん、あのようにしていただいて、何と言えば良いのか……

 本当にありがとう」


 普段ならこのような場合、その場に埋葬してしまってもおかしくないのだ。

 遺体を動かす前提でのアンナリーナの処置に、バルトリを始め生き残った冒険者たちは深く頭を下げた。


「私のアイテムボックスには十分な空きがあるので、本拠地であるアシードに連れ帰ろうと思います」


 バルトリはずいぶんと人情の厚い商人のようだ。

 アンナリーナは頷いて、次の場所に案内した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ