158『悲しみのなか』
「この襲撃の一報を届けるため、すでに私の仲間がアルファ・ケンタウリに向かっています。
そろそろ着く頃だと思いますが、ここに到着するまでには多少時間がかかるかと」
「何から何まで申し訳ない」
バルトリが頭を下げた。
憔悴した顔が気の毒だが、この後さらに追い討ちをかけることになるだろう。
「あの……皆さん、長い間何も召し上がってないでしょう?
胃に優しいスープを用意していますのでいかがですか?」
本当は失った血を増やすために、がっつり肉を食べてもらいたいところだが、彼らには仲間の遺体の確認という辛い仕事が待ち受けているのだ。
冒険者などはそれほど繊細だとは思わないが、今回の襲撃は彼らの精神に深い傷を残しているかもしれない。
何よりも、近接戦闘が一切なしでズタズタにされたのだ。
「アルファ・ケンタウリから憲兵さんたちが到着するのは、早くても明日になるでしょう」
そこにアラーニェがスープ鍋と食器類、それに柔らかな白パンを持ってテントに入ってきた。
絶世の美女とも言うべきアラーニェを見て、男たちが魂を飛ばしている。
「えーっと、アラーニェは私の従魔です。本性はアラクネ……口説かない方がいいですよ?」
ニィと笑んだ、その口許には鋭い牙が覗いている。
途端に男たちがシュンと項垂れてしまう。
「まあ、まず食べて下さい」
重苦しい空気の中、食事が始まった。
男たちが、今までいたテントを出て、また違うテントに案内された。
……そこには、セトたちが捜索して回収した遺体が15体並んでいる。
一応、生き残った彼らに遺体の確認をするか尋ねたのだが、全員が希望したのでこの場に連れてきたのだ。
セトたちにザッと清められた遺体は、前世の死体袋のように縫われた布に包まれ並んでいる。
合わせを開くと顔が確認できるようになっていて、5人は順番に検めていった。
テントの中に嗚咽が広がっていく。
アンナリーナはそっとテントから出て、外で待つことにした。
「主人、こちらはすべて終わりました」
セトたちには遺体の回収をしながら、瓦礫とその他の物品……例えば冒険者たちの持ち物や武器、強奪されなかった商品などを一か所に集めさせていたのだ。
「ありがとう。
あの人たちが落ち着いたら、そっちの方も見てもらうね。
……今日中に出来ればいいのだけど」
アンナリーナの危惧は良い意味で外れ、一刻ほど仲間たちとの別れを惜しんだのち、5人は揃ってテントから出てきた。
「リーナさん、あのようにしていただいて、何と言えば良いのか……
本当にありがとう」
普段ならこのような場合、その場に埋葬してしまってもおかしくないのだ。
遺体を動かす前提でのアンナリーナの処置に、バルトリを始め生き残った冒険者たちは深く頭を下げた。
「私のアイテムボックスには十分な空きがあるので、本拠地であるアシードに連れ帰ろうと思います」
バルトリはずいぶんと人情の厚い商人のようだ。
アンナリーナは頷いて、次の場所に案内した。




