表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
392/577

152『逃げたい……』

「お嬢さん、お待たせしたね」


 部屋に入るのに頭を少し下げて、大男がそう言いながら入ってきた。


「改めて謝らせてもらうよ。

 勘違いして、余分な手間をかけさせて悪かった」


「いえ、あの……楽しかったですし」


「そうなのかい? 本当に?

 そう言ってもらうと気が楽になるんだが。

 ああ、自己紹介が遅れたね。

 私はこの大学院の学長、リーダロット・シャルメンタルだ。

 よろしく頼むよ。小さな薬師殿」


 青緑色の髪を首の後ろで束ねた、銀色の瞳をした大男。

 見るからに、戦士のような出で立ちをしているが、学長という事は魔法職なのだろうか。

 アンナリーナが知らず知らずのうちに首を傾げていると、リーダロットがクスクスと笑いだした。


「ごめん、ごめんね。リーナ嬢がとても可愛らしかったから。

 私は、基本的には魔法職なんだけど巨人族の血が濃く出たようでね。

 私の職種は【魔法剣士】なんだよ」


 そういう職種があるのは、聞いて知っていたが、実際には初めて見たのだ。

 物珍しそうにしていたアンナリーナは、ふと思い出してポーチを探った。


「あの、これは私の師匠からの紹介状です」


 アンナリーナが旅に出る前にユングクヴィストにもらったものを、リーダロットに手渡した。

 彼はブーツの踵のあたりから小さなナイフを取り出して、封筒を開ける。

 封蝋を見てもピンとこなかったが、中に入っていた証書のようなものを開いて、ゆっくりと目を通した。


「ユングクヴィスト様のお弟子か。

 道理でな、優秀すぎるほど優秀だ。

 ……リーナ嬢、ものは相談だが、あなたはここに留学する気はないかな?」


 アンナリーナは突然の申し入れにびっくりする。


「実は、先ほどの試験の結果を見させてもらった。

 これほどの逸材を逃すなんて、自分が許せないのだよ。

 どうだろう? 何なら客員としてもてなすし、出来れば教鞭をとって欲しいのだ」


 何やら話が大きくなっている。


「あの、私は今旅の途中なんです。

 素材の採取をしながら、出来れば隣の大陸まで行くつもりです。

 だから、申し訳ないですが……ごめんなさい」


「今回はいつまでここにいるんだい?」


「はっきりとは決めてなかったんです。でも、そろそろ王都にも行きたいと思ってるんです」


 この大学院に収蔵されている書物に興味はあるが、アンナリーナの危機察知能力にビンビン響いてくる。

 ここはなるべく早く、トンズラするべきだ。


「あの〜 そろそろ連れが心配するので、宿に戻りたいのですが」


 時刻はそろそろ夕方になりつつある。


「そうだね。

 今日は長い時間を割いて頂き、ありがとう。できればこれからも、お付き合いいただきたい」


 アンナリーナとしては、あっという間に流されて、取り込まれてしまいそうで、怖い。


「では、では失礼させていただきます」


 走りだしたいのを必死で我慢して、アンナリーナは受付の女性の先導で部屋を出て行った。

 それから大学院の門を出るまでが、どれほど長く感じただろう。


「残念だけど、もうこの町から出た方がいいのかもしれない」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ