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126『貴種の採取』

 ドピタを出発したアンナリーナたちの馬車は北に向かって疾走していた。


「リーナ!

 後ろに行ってたっていいんだぞ!」


 テオドールとともに御者台に納まっていたアンナリーナは、強い揺れに耐え、進行方向を探索し続けていた。


「うん、大丈夫だよ。

 今のところ、このあたりに異常はないから、いい場所があったら休憩しようか」


 そろそろエピオルスたちにも水を飲ませてやりたい頃だ。

 実は本来、召喚獣に飲食は必要ないのだが、移動中はずっと一緒なのだ。

 すでに家族と言って差し障りないエピオルスたちに、アンナリーナは愛情を向ける。

 皆が食事中はエピオルスたちにも本来の嗜好そのままの肉食を与え、水はアンナリーナが精製した魔力水で、その基本値を上昇させていた。


 以前は中継地だったであろう空き地を見つけて、テオドールはエピオルスたちを操る。

 そこで落ち着いたふたりは、馬車から降りてエピオルスたちの世話を始めた。


「ここって、どうして寂れちゃったんだろう」


「……井戸の様子を見るに、枯れちまったんだろうな。

 もう、長いこと使われてない感じだ」


 アンナリーナが水を精製する事ができる為、実感がないが、旅人たちにとって水は命を繋ぐために大切なものだ。

 中継地や野営地には必ず井戸があるし、それは定期的に管理されているものだ。


「そっか、枯れちゃったらしょうがないよね」


 実はこの井戸、枯れたわけではない。

 ここでは5年ほど前に、何者かに毒を投げ込まれ、かなりの数の死者と中毒者を出したのだ。

 その事があって閉鎖されたのだが、水を持ち歩かなくても良いアンナリーナには関係ない事だ。

 エピオルスたちに水と、彼ら用に味付けしない焼肉を与えて、自分たちも遅い昼食にする。


「もう、今日はここで野営しても良いかもね。

 周りにヤバい魔獣も居なさそうだし、もしよければ採取に行きたい」


「別に急ぎの旅じゃないんだから、良いんじゃないか?

 もし、そうなら俺はちょっとガムリに相談があるんで外れてもいいか?」


「じゃあ私は、イジを連れて行こうかな」


 馬車のステップに座るアンナリーナと、立ったままだがもたれかかるテオドール。ふたりは簡単なホットドッグを頬張り、水筒から直接紅茶を飲んでいる。


「じゃあ、ここは任せていいかな?」




 魔力が巡る森の中をゆっくりと【飛行】するアンナリーナと、付き従うイジ。

 今回はイジがいるため、探査に集中する事が出来るアンナリーナは、周りの採取出来るすべてのものを、たとえ石ころひとつでも、その手に取っていた。


「あ! あれは!!」


 それは師匠の書き残した、手書きの図鑑にあった、ある特殊な調薬に使用する薬草が群生している場所だった。

 この薬草はオベニウスと言い、自生しているのは初めて見る。

 アンナリーナは師匠から譲られた少量の乾燥オベニウスを持っていたが、目の前の群生地に歓喜した。


「イジ、しばらくここで採取します。

 あなたにはあそこのサラン草をお願いできる?あっちはいつも通りの取り方でいいから」


「わかりました、主人様」


 森の中の少しだけ拓けた群生地。

 そこから木立を数十歩離れたところにサラン草が茂っていた。

 この薬草は、今どれだけ有っても多いとは言えない。

 ギルドに依頼すれば簡単に手に入るのだが、やはり品質が心配なのでアンナリーナは自分たちで採集することにしていた。

 オベニウスは取り尽くさないように、品質や生育具合を吟味して採取した。

 後ほど、この位置をマップに登録し、今夜の野営地であるあの空き地には転移点を置くつもりだ。


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